分科会E

NPO法人福岡パフォーミングアーツプロジェクト(FPAP)
リージョナルシアターが地域を超える日
演劇が身近な存在になれば、アートも近くに見えてくる

現在では地域発の作品づくりも盛んになり、地域を超えた演劇人の交流も活発になっている。次のステップとして必要なのは、その環境を継続させるための興行システムの確立である。劇場でのつくり込みを必要とする演劇公演の場合、プロモーター、公共ホール、演劇鑑賞団体いずれかによる買取公演に巡演は限られ、そのほとんどが東京発という「中央からの出荷状態」が続いている。他ジャンルの舞台芸術に比べ、その地域以外へ伝播していかないのが演劇の構造的課題になっている。ここでは、斬新な試みでこの課題に挑戦している芸術団体と制作者を各地から招き、演劇が地域間を巡演するにはどのような環境が必要か、送り出す側と受け入れる側に求められるものはなにかを議論する。演劇という装置産業的性格を持つ表現で巡演が可能なら、どんなジャンルでも応用が利くはず。会場に集う幅広い分野のアートマネージャーと共に、この課題を考えたい。豊富な経験に裏打ちされた分析と提言で、これまで誰も迫らなかった演劇の壁を崩していく。

■NPO法人福岡パフォーミングアーツプロジェクト [ホームページ
通称:FPAP(エフパップ)。福岡の地域演劇人を中心に2003年10月設立。福岡・九州の地域舞台芸術文化振興をミッションとする。主な事業は、舞台芸術関連情報の収集と発信/セミナー・ワークショップ・演劇祭企画/行政への提言など。2006年4月より福岡でもっとも地域団体の利用の多い小劇場「ぽんプラザホール」と音楽・演劇練習場「ゆめアール大橋」の指定管理者となる。地域舞台芸術団体54団体が賛助団体となっている。NPO法人アートNPOリンク正会員。

パネリスト

斎藤 ちず (さいとう ちず)
NPO法人コンカリーニョ 理事長
1995年、演出活動とともに小劇場フリースペース運営開始。ダンス公演やフェスティバルのプロデュースを行う。現在、パトス(キャパ150)とコンカリーニョ(キャパ250)を札幌市西区にて運営。
・コンカリーニョ[ホームページ] 

谷瀬 未紀 (たにせ みき)
ピカラック
1990年より舞台制作に関わる。92〜2000年、制作スタッフグループ「劇的企画NEO」代表。93年、北九州演劇祭立ち上げ(初年度事務局勤務/現実行委員)。2001〜2004年「飛ぶ劇場」専任。制作事務所【toban-ne】代表。2005年3月より活動の屋号を「ピカラック」とする。広告デザイン・舞台監督等も手がける。
コンテンポラリーダンスユニット「horamiriダンス研究所」制作。摩訶不思議管弦楽団「呆けすとら」歌舞音曲スペクタクルショウ制作。2004年とびうめ国文祭閉会式音楽劇「エターナリー」(草刈正雄主演)現地コーディネーター。2005年「水族館劇場」北九州巨大テント公演制作。2006年「新しい天使」北九州制作団事務局長。
・ピカラック[ホームページ] 

井神 拓也 (いがみ たくや)
ヨーロッパ 企画制作
1999年、札幌にて「劇団千年王國」旗揚げに制作として参加。北海道文化財団アシスタントコーディネーターなどを経て、2004年より京都「ヨーロッパ企画」にて制作を担当。
・ヨーロッパ企画[ホームページ] 

詩森 ろば (しもり ろば)
風琴工房主宰/TOKYOSCAPEフェスティバル ディレクター
1993年、劇団風琴工房旗揚げ。脚本と演出を担当。近年はアウトリーチ的な演劇ワークショップも多数。2004年からは東京6劇団が京都に集うTOKYOSCAPEのフェスティバルディレクターを務める。
・風琴工房[ホームページ] 

ケーススタディ報告

森 忠治 (もり ちゅうじ)
tripod
1995年、三角フラスコの結成から制作を担当。2005年より制作部を独立。「tripod」の名称で活動。三角フラスコの運営、公演の企画・制作、他地域劇団の仙台公演制作などを行う。
・tripod[ホームページ

司会

荻野 達也 (おぎの たつや)
fringe プロデューサー
遊気舎プロデューサーを経て、小劇場演劇の制作者を支援するサイト「fringe」を2001年開設。制作現場の視点から創造環境整備のため活動中。国際演劇評論家協会(AICT)日本センター会員。
・fringe[ホームページ

アートの力、こう考えます!

今回のセッションを通じて浮き彫りにしたいことは「他者の受容、多様性のある社会の実現」におけるアートの力。地域演劇の巡演は、他者性が地域を超えて流通するアートそのものであり、その他者性に富んだ公演が成立することは、すなわち多様性のある社会の実現といえる。公演する側受け入れる側ともにアートの恩恵を受けることができる機会。演劇の潜在的魅力を開花させるためにも、その構造的課題が放置されている現状に切り込み、私たちが忘れている/あきらめているアートの底力を照らし出すセッションにしたい。

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