g^|p‹KAIZENvO
HOME
vWFNg|
Tv
Jv[e[V
ڍ׏
vO
{eBA
R
tHgM[
f
̑惌|[g
FACA
FPAP
RL
KAIZEN
pubNRg
Rg̕Wɂ‚
|EQ
KAIZENuO

採択企画レポート

企画者

山崎広太

企画名

新人振付家育成のためのスタジオシリーズ

詳細

最終報告 (2009/11/20)

Page 1 2 3


新人振付育成のためのスタジオシリーズのレポート 山崎広太


2001年からNYベースに活動し、おのずから日本とNYの環境の違いを感じ始め、日本の現状に何とかしなければいけない欲求が生じました。海外研修で来られた方々は誰もが感じることだと思います。ちょうどその時にトヨタ芸術環境KAIZENプログラムのことを知り、応募にいたりました。そして、このことを機に、自分はアーティストですが、日本における現状をリサーチして、少しずつ改善に向けたあり方を追求し、少しずつですが積極的に行動を起こしたいと思いました。日本では、アーティストは作品を創作することのみに重点を置かれていますが、海外では、多くのアーティストが自らリサーチやキュレーション、対談などをおこない、よりよい環境をめざして働きかけ、行動しています。まずは、アーティストによるアーティストのためのオーガニゼーションが日本にも必要不可欠と考え、BAL(Body Arts Laboratory)の設立にいたりました。トヨタ芸術環境KAIZENプロジェクトでサポートしていただいた、「新人振付育成のためのスタジオシリーズ」から始まり、ここまで拡張することができました。スタジオシリーズを支持していただいたトヨタ、企業メセナ協議会の方々には大変感謝いたしております。

話は「新人振付育成のためのスタジオシリーズ」戻ります。このトヨタ芸術環境KAIZENプロジェクトの応募要項を読んで、いま、一番、日本におけるダンスの現状にとって必要でまた実現可能なことは何だろうと考えました。まず私個人の経験から、私のパートナーである、西村未奈が実際にNYのDTWで行われている、スタジオシリーズ(現在は、1シーズンに8人の若手コレオグラファーがこのプログラムを通して作品を制作・発表)というプログラムを経験をし、作品を創る作家として大きく成長をしたことから、ぜひ、このいままでの日本にはあまりなかった創作プロセスを重視したプログラムを導入しようと思いました。

このようなプログラムは振付家育成のために、必要欠かざるべきものですが、このシリーズがおこなわれたからといって、早急に環境や状況の改善に結びつくことはありません。あくまでも地道な作業です。しかし、これが継続しておこなわれることにより必ずや、アート環境が豊かな方向へと導かれていくものと考えます。アーティスト同士が、このようなプログラムを通して、交流を持ち、自分たちの問題点を客観的に、熟練の振付家であるキュレターと一緒に見据え、考えることは、作家としての大きな成長に結びつくことはもとより、コミュ二ティーの形成、成長にもつながるものです。それゆえ、このシリーズは継続しておこなわれることをのぞんでいます。

実際、スタジオシリーズのレジデンシー期間の最後にショーケースが行われ、そこで、いくつかの問題点と発見がありました。今回、このプログラムで独自に織り込んだ要素(NYのDTWにはないシステム)は、長年、日本でダンスに貢献された厚木凡人さんと、いまもっとも実験的に活動されている手塚夏子さんにキュレーターをしていただき、そのような普段出会う機会のないようなアーティスト同士が一同に介する場を設けたということです。横のつながりでさえ、ままならない日本の状況で、縦のつながり、ましてジャンルの違いを超えてアーティスト同士が出会うということは、貴重です。例えば、異なる芸術志向をもち、お互い意義を唱えるアーティスト同士だったとしても、必ずやそこには、リスペクトし合う関係が生じます。そしてそれを端から見ている、お客さんは、そのダイナミックな関係と、ダンスに対しての広がりを感じるのです。このようなプログラムであるゆえにお互いしっかりと出会うことができるのです。ただの顔見知りだったりでは、互いの作品の公演を見にくることや、しっかりと話しをする機会はありません。これは最近のコンテンポラリーダンスシーンに欠けていることであり、ぜひ、コンテンポラリーダンスの中で、年齢、考えの違いを超えて、このような機会が持てるようにしたいと思いました。これからアーティスト同士が交流を持つことのできるプログラムを、もっと提供していきたいと思っています。それと、もう一つ、劇場ではないスタジオという場での作品発表により、お客さんとアーティスト、ダンサーが一体となってコミュニケーションを持つことができました。また、集客も予想以上にありました。

公演終了後、アーティストトークを設けたのですが、反省点が一つ。それはモデレーターとしての自分の対応にありました。作品を発表した、福沢里絵さん、捩子ぴじんさんに対して、主催者なのにも関わらすアーティストとしての個人的な感情が入り、客観的に対応ができず、後悔と反省が募っています。そのこともあり、アーティスト同士の考えの違いから一瞬、ちょっとした喧嘩になってしまいました。これは絶対あってはならないことだと思いました。あくまで自分はモデレーターなのだから、アーティストがやろうとしていることを、サポートする者として参加しなければいけなかった。これも一つの経験です。このような主催側に立つことは私の人生において初めてのことだったのです。

簡単に「新人振付育成のためのスタジオシリーズ」(今後、スタジオラボの名称に変更)の反省点を箇条書きにしたいと思います。

  • 推薦される振付家の選考について:
    今回は、キュレターが推薦する若手振付家がそれぞれ一人ずつだった。しかし、スタジオと選ばれた振付家のロケーションが遠い場合、とても交通費がかかってしまうことや、選ばれた振付家がリハーサルを必要とする類いの作品を提示したいかどうかなど、推薦される振付家の選考はいろいろなことを考慮しながら決める必要があるので、今後は少なくても、キュレターには3人程の候補者を推薦していただき、その中で、BALのコミッティ、キュレターともに相談し合い、最終的な決断をすることが理想。
  • オープンリハーサルは、3週間前か一か月前に行う:
    今回は、オープンリハーサルは一週間前だったことで、ほとんど作品ができあがってしまっていて、得たフィードバックをアーティストが反芻し公演前に根本的なことを吟味する時間がなかった。
  • 主催者側のアーティストは、自分の私情をなるべく入れない: あくまでアーティストをサポートする側に立つ姿勢が必要。もちろん、あとで個人的に作品に対してのフィードバックを行うことはOK。

新しい提案として、

  • ショーケース形式にして、創る作品は30分以内にし、キュレター同士の会話ができるアフタートークにも時間を割き、お客さんとも交流の場を持つ。

このような今回の反省点、発見が、アーティスト、アートマネジメント、ダンスに携わっている方々の、今後の活動の少しでも参考になればと思っております。

Page 1 2 3


■山崎広太 プロフィール:
ダンサー・振付家として活動する傍ら、1995年から2001年まで、ダンスカンパニーrosy Co主宰。90年代は、いろいろなジャンルのダンスが融合することが、少しでも日本のダンスの状況を変えることができるのではないかという思いから、いろいろなダンスのジャンルのダンサーを起用し作品を創る。
02年からNYにも活動の場を拡げ、東京とNY、または第三の国のダンス状況をリサーチ、比較しながら、日本にとってふさわしいダンスの環境を考える。振付家としては、セネガルのダンスカンパニーに振付た作品FAGAALAで、07年9月、New York Dance and Performance Award(ベッシー賞)をNYにて受賞。08年4月には、フィラデルフィアのダンスカンパニーシアターXに新作In-ouを振付、好評を得る。
現在は、バーモント州ベニントンカレッジでゲスト講師として、教鞭をとる。