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採択企画レポート

企画者

山崎広太

企画名

新人振付家育成のためのスタジオシリーズ

詳細

第2回レポート (2009年4月28日)

いま、僕は7週間に渡るバーモント州ベニントン大学での教えを終え、NYに戻ってきました。BAL(Body Arts Laboratory:ボディ・アーツ・ラボラトリー)が立ち上げた、2009年6月から始まるフェン・フェア・フェスティバル(Whenever Wherever Festival:WWFes)のスケジュール調整も、ほぼ終わり、12月のNYでの新作公演のリハーサルと、6月にバルシ二コフ・アート・センターで踊るソロ作品(インドネシアの振付家、サルドノや、コンタクト・インプロを開発したスティーブ・パクストンらもソロを踊るショーケース形式の公演)を、少しずつ考えています。

NYは、アーティストが運営、企画を行うオーガニゼーション、「ムーブメント・リサーチ」の30周年記念の年であり、そのスプリング・フェスティバルが行われています。

昨日も、ニューミュージアムから始まり、8つのギャラリーで行われるパフォーマンスを観客が巡回式にみていくパフォーマンスツアーと、世界5か国で行われているライブパフォーマンスを、ネットを通して、リレー形式で観る企画が行われました。フェン・フェア・フェスティバルも、このように、もっと今後、多角的な視点をもつ企画が行われるようになることを望んでいます。昨日のイベントを見終わって、とかく、ギャラリーに体が溢れていると、何か最初にアートが立ち上がるのは、基本の体から生まれるものであり、社会に対して行われる行動も、すべて体からなんだな〜ということを、感じました。

このムーブメント・リサーチは、30年前に、ほんの2人位のアーティストによって立ちあがったオーガニゼーションらしいのですが、そこから、たくさんのアーティストが育っていき、ムーヴメント・リサーチを自分のホームだというアーティストも少なくありません。この、オーガニゼーションに接して、小さなコミュニケーションやコミュニティーを継続して育んでいくことの重要性を学びました。NYは移民の都市なので、他の国では見られないような独自なコミュニティが形成されているとは思うのですが、ただ、アーティスト同士のコミュニケーション、コミュニティーの活性化は日本でも必要なことのように思えます。そのことが、今後、アートが自然に日常生活の一部となり、豊かさをもたらしていってくれるのだと思います。ムーブメント・リサーチが起こした変革は、ダンスの中におけるヒエラルキーを無くし、誰もがアーティストになれることを促した点だと、あるアーティストは話していました。

また、ヒエラルキーということに関係して、USでは財団に於ける助成の審査も、パネリストの半分はその都度、依頼されたアーティストが占めます。劇場のキュレーターも、交替にアーティストが務める例が多いです。僕もその事実に少し驚いたのですが、日本では、ありえないことです。すべてを、財団や、劇場、制作の方々に任せている日本の状況では、アーティストにとって受け身で不公平な状況、ひいては、アートの本質が見落とされる可能性が生まれやすいかもしれません。BALが立ち上げた、フェン・フェア・フェスティバルも話題性を追うのではなく、本当に今、日本のアート環境で必要なことは何なのかを考え、アーティストの声を聞きながら、注意しなければいけないことには注意して、より実験的で創造的なアート活動をサポートしていきたいと考えています。小さなコミュニティを大切にしつつ、ヒエラルキーのない、自由にアーティストが関係できるオーガニゼーションを、BALはこれからもめざし、より多くのアーティストがインディヴィジュアルな表現を追求していける環境づくりに貢献していきたいです。いずれにしろ、まったくゼロから始まっています。皆さまに、ご協力いただけると大変うれしい限りです。

もう一つ、ムーブメント・リサーチの特徴は、フリーの新聞、ムーブメント・リサーチ・ジャーナルを発行したことです。これは、とても重要なことだと思いました。社会に対して、アーティストの言葉を広げることです。このことは昨年のスピーチでも、触れたのですが、新聞の発行への助成を、今年のこのトヨタ芸術環境KAIZENプロジェクトにトライしたかったですが、今年はなくて残念です。

ここで、フェン・フェア・フェスティバル(WWFes)の特徴を、お伝えしたいと思います。

6月から始まるWWFes、今回、このフェスティバルの、メインを占めるのは、振付家、アーティストがテーマを決めて、それに対して、受講生とともに、考えを共有し、模索するシリーズです。今回、多数のアーティストに講師となっていただくことができました。こういう、ワークショップは、今まで、あまり日本には、ありませんでした。

内田樹さんの著書の中で、「言いたいこと」は「言葉」のあとに存在し始める。「私」は「私が発した言葉」の事後的効果として存在し始める、というくだりがありました。自分の中にある、わけのわからないものを、とりあえず、言語化したり、提示することが、そのあとの、創造への大きな足がかりとなるのでは、と思うのです。

企画の段階で、10名ほどのアーティストにメールをしました。そしたら、ほとんどの方から、賛同と、講師として参加したいとの返答をいただきました。この反応から、ダンサーも踊るだけで何かを伝達するのではなく、何か他の、身体を巻き込んでのコミュニケーション方法を探しているのだと感じとりました。そしてこれを受講生が共有することは、とっても、刺激的なことであり、ただ闇雲に、受け身で、クラスを受けるより、確かなことを体験できるのではないかと推測します。

助成いただいいた「新人振付家育成のためのスタジオシリーズ」で、捩子ぴじんさんと、福沢理絵さんが、港区のアーキタンツでのリハーサルを進行中です。この企画もWWFesのプログラムの一部です。

それ以外にも、多数のプロジェクトが進行中です。

プログラムの詳細については、また追って報告させてください。

今回、僕は、初めて、数人のメンバーの力を借りて、オーガニゼーションを立ち上げたり、フェスティバルをオーガナイズしようとしています。お金もまったくない状況です。僕は、基本はアーティストであり、このようなことをしようと思うと、多分、普通の人の、何十倍も時間がかかり、なんだか、最近ほとんどの時間をこれに費やしています。もちろん、そのこと自体、自分は喜んでやる気持なのですが、やはり、オーガニゼーションにおいて、アーティストではない、ディレクターという存在は必要だなと感じ始めています。こういう時に、社会とアートを考える、つまり、アートマネジメントということが、問われてくる気がします。もしかしたら、日本では、勝手にアートマネジメントという言葉が、暴走しているのではないでしょうか? アートマネジメントにおいて、もっとも必要なことは、現場の声ではないでしょうか? アーティストと共存していくのが本当のアートマネジメントであってほしいなと思います。

山崎広太
(2009年4月28日)

■山崎広太 プロフィール:
ダンサー・振付家として活動する傍ら、1995年から2001年まで、ダンスカンパニーrosy Co主宰。90年代は、いろいろなジャンルのダンスが融合することが、少しでも日本のダンスの状況を変えることができるのではないかという思いから、いろいろなダンスのジャンルのダンサーを起用し作品を創る。
02年からNYにも活動の場を拡げ、東京とNY、または第三の国のダンス状況をリサーチ、比較しながら、日本にとってふさわしいダンスの環境を考える。振付家としては、セネガルのダンスカンパニーに振付た作品FAGAALAで、07年9月、New York Dance and Performance Award(ベッシー賞)をNYにて受賞。08年4月には、フィラデルフィアのダンスカンパニーシアターXに新作In-ouを振付、好評を得る。
現在は、バーモント州ベニントンカレッジでゲスト講師として、教鞭をとる。