戦争や災害をめぐる作品を制作してきた私にとって、COVID-19のパンデミックは、表現活動の対象になるはずでした。国内外からこの歴史的な局面に関しての意見を求められもしました。しかし、答えられないのです。
小学校の閉鎖は決定的でした。低学年の二人の子供を育てながら自宅で制作を続けるのは限界があります。芸術的な想像力は、日々の生活、料理や教育、遊びの工夫に注がれるようになっていきました。日常のなかに創造性が不可欠だったのです。それでも想像力は次第に枯渇し尽きていきます。
リモートで監理されるパートナーは会社員です。電子ネットワークの監視の死角をついて、二人で対応することも困難になり、子供のいる近所の保護者たちとの協働作業が始まりました。年齢差のある子供たちが5人から10人ほど集まり遊びます。それを良しとしない隣人からの攻撃もありました。この状況は、戦争や災害時に見られる普遍的な危機の時間と空間だったのです。毎朝、二人の子供たちを学校に見送れるようになった「いま」だからこそ、振り返り見えてくるイメージなのです。