鬱病を患った友人の自死と遺されたものたちのその後を見つめたドキュメンタリー映画『わたしたちに許された特別な時間の終わり』(2013年公開)を手掛けて以来、メンタルヘルスの改善というテーマは自らに向き合う続けるべき未解決の課題だと考えてきた。

この原稿を書いている2022年4月11日現在、新型コロナウイルス感染症まん延防止等重点措置は解除され、Gotoトラベルも再開が準備されている。
そんな今、ステイホーム中に取材した引きこもりの方の言葉が忘れられない。
「これまで引きこもっている自分が情けなくて許せなくて辛かったんです。でも、今、ステイホームを求められて家にいるわたしはとても生きやすさを感じています。だって社会が一億総引きこもりのような状況では、負い目を感じる必要がないから」

パンデミックに伴うステイホームを経た”それから”の社会は、多様な生き方を選ぶ人たちに対して寛容な社会であって欲しい。文化や芸術が常識や社会通念を一度リセットする思考を持ち得ることはそのことを実現するための希望であると考えているし、私はその眼差しを忘れずに創作の現場に向き合いたいと考えている。