様々な電子機器が私たちの感覚と世界との仲立ちするようになって久しく、インターネットは現代社会において既に不可欠なものになりつつあります。それに加えて、コロナ禍における様々な規制の対応策としてその力が大いに発揮されたことで、その社会的な役割をさらに拡大しています。
しかしそんな中でも、私は興味のあるものと向き合うときに「触れたい」という気持ちをなくすことができません。それは言葉通りの温度や重さ、質感といった触覚的な情報だけにとどまらず、触れることのできる距離だから感じることのできる匂いや音、そして周囲の環境などの様々な情報を伴った視覚情報、そうした全てを包括的に感じ取ることで、「そこに在る」ということを確かに実感し、より深く知ろうとしていると言い換えてもいいかもしれません。
人は無意識の中で身体を通して得るいくつもの感覚を複雑に結びつけ、相対する事物を認識しています。私は、人やもの、この世界と向き合うということは、そういったあらゆる感覚を総動員することで初めて成り立つのではないかと考えています。
オンライン上で様々な情報を得るだけでなく、人とのコミュニケーションや様々な取り組みが行われるようになった今であるからこそ、身体的な感覚から生まれる実感が、今後より大きな意味を持ってくるように思います。