わたしは今この文章を二度目のロックダウン下にあるドイツで書いています。文化施設は再び閉鎖されましたが、その前に補償も決定されました。ドイツの文化芸術支援では、民間諸団体を統括し、前身を含めると1981年から活動してきたロビイング組織であるドイツカルチュラルカウンシル(Deutscher Kulturrat)の存在が大きく影響しています。

新型コロナウイルスの感染拡大は、日本の文化芸術分野には危機を受け止める制度的基盤が十分に存在しないことを明らかにしました。自粛に対する補償はどうなったのでしょうか? 要請の経緯と実際の効果を検証する調査はなされたのでしょうか? 次に同様の事態が生じたとき、日本で「芸術家」を定義し、支援する道筋は見えたのでしょうか?

今回明らかになった問題をそのままにしてはなりません。感情論で乗り越えるのではなく、制度的に前進する必要があります。その際は行政に委ねるのではなく、現場の経験と知恵を積み上げ、伝達し、反映させるべきです。また、文部科学省、経済産業省、外務省等に散らばっている文化芸術支援を統括する「文化省」設立の構想について、わたしは以前は懐疑的でしたが、一人ひとりの観客、アーティスト、施設職員やフリーランスの関係者を本当の意味で支える環境を実現するために、文化芸術に関わる公的制度全体を地域と国の両面で再考すべきだと考えるようになりました。