場所の感覚/ドリーミング
氷見クリック2006上映風景 |
2004年から始まる「氷見クリック」は富山県氷見市に招いたアーティスト(コマンドN代表・中村政人氏を中心とした)と地域住民が協働で市内に遍在する「場所」を調査、観察したビデオ画像を編集し、作品化したものを上映・共有するプロジェクトです。
ここでいう「場所」とは、自然生態を色濃く含む実体のある場所から、さまざまな地域ネットワーク等の無形な場所までを含んでいます。
氷見クリック2006上映風景 |
そして2006年から「氷見クリック」を内包しつつ、この地域の住民や行政の意識からほとんど周縁化された「場所」が発言権を獲得するために「ヒミング」を立ち上げました。ヒミング/himmingとは「氷見+ハミング」とした造語です。「氷見(ヒミ)」の響きを大切に、「ハミング」持つ、爽やかさ、調和、和音、リズム、幸、平和を大切に。そんな団体をめざして付けられました。
また、語尾にINGがつくことで、現在進行形で変化する氷見のイメージも込めました。
竹ドームプロジェクト |
その「場所」は、昔どんな力として顕現していたのでしょうか?
いま、どんな顔をしているのでしょうか?
明日は、何になりたがっているでしょうか?
サステイナブルな地域活動をめざすうえで大事だなあと思うことは、「場所」に基盤をおいている先達の情報や知恵。そこには、プレイスリテラシーを持ち、エコロジカルな経済の可能性を探求し、おそらく言語化しがたい微細な何か...。
このプレイスリテラシーと、アートが持つであろう微細な受信機能と爆発的な触媒能力との連鎖が起きる妄想をしています。
天馬船プロジェクト
昭和30年代まで、氷見の海上の足は漁業用の小船=天馬船でした。船大工は、船にあう曲木を探すために山の人々と語り合い、森の木が川を下り海で使用される地域の循環がありました。
しかし、今ではFRP船の普及とともに木造和船の文化や造船技術は失われつつあります。
このプロジェクトでは、多くの人々の参加協賛によってmini天馬船レース ミニチュア天馬船の川流しを行い、その資金の中から本物の木造天馬船を技術の伝承と共に復活させ、人々の繋がりを創り出すことを目的にしています。
天馬船プロジェクト |
2006年に始まり、3年目の今年、7月27日、40年ぶりの木造和船、天馬船の進水式が執り行われました。
ヒミングでは、アートの目を通して、循環型社会をめざしたいと思っています。
昔は、すべてのものが、地域の中でまかなわれていたと思うのです。その地域で必要とされるものは、その地域で生産されるものだった、ということです。ヒミングにとって、天馬船は「地域の循環」の象徴です。
氷見の森の木が、天馬船となり、氷見の海で使われる。
氷見の魚を捕って、氷見の人たちが食べる。
舟は、やがて朽ちて土に還る。
天馬船を創るために、山に入り、木を切る。
切り出された場所は、光が入る。
涼やかな森になり、山の環境がよくなる。
山の杉が切り出され、広葉樹が植林される。
その葉っぱは腐葉土となり、川の力によって海にミネラルを運ぶ。
海はミネラル豊かとなり、魚が育ちやすい環境がつくられる。
壮絶に長い時間が必要なプロジェクトですが、始めないと始まらない。だから、ヒミングはみんなと一緒にやってみよう、と思ったわけです。
そして、氷見の里山の木を使って作るものに天馬船を選んだのは、その「船大工の技」を後世に伝えたい...と思ったから。残そう! と行動しないと、「魚の町・氷見」の漁業を支えてきた船大工の技が消えてしまう...と思ったから。
わたしは、船大工の技を残すことは「アート」だと思っています。
天馬船進水式 |
ヒミング・アートセンター
ヒミング・アートセンター |
2008年9月23日、氷見市北大町にヒミング・アートセンターをオープンしました。
天馬船プロジェクトの舞台である上庄川河口沿いに建つ堀埜家石蔵は、味噌/醤油醸造のための穀物蔵でした。2006年、2007年ヒミングのイベント会場として提供いただいた、顔となる建物です。
堀埜家は、現在の氷見市の礎を築いた名家です。サステイナブルな漁法である越中式定置網の先駆的網元でもあり、多くの美術家の後援者でもありました。
ヒミングの拠点として、「地域の臍」ともいえるこの蔵から「何かになりたがっている場所」を発見し、プレイスリテラシーを総動員してより豊かな場所に育てる活動をめざしていきます。
ヒミング・アートセンター小沢剛アーティストトーク風景 |
※現在、ヒミング・アートセンターは、小沢剛ベジタブル・ウエポン@ヒミングを開催中(2008年12月28日まで)
(2008年11月27日)
今後の予定
2008年12/6(土) 午後3時〜5時
「吉井靖 地域活性化セミナー」
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