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第二歩を踏み出す

TAMスタジオ2024 連続ゼミナール
「ここからはじめるアートマネジメント」をふりかえって

昨年に引き続きアートマネジメントに興味のある学生を対象に、アートマネジメントの第一歩を踏み出すための学びの場として、TAMスタジオ2024「連続ゼミナール ここからはじめるアートマネジメント」を開催しました。今年も全国各地、香川県/奈良県/京都府/神奈川県/東京都から、芸術学や文学、人文学、社会学、国際学、経営学、音楽学、都市科学部などに在籍する学部生〜大学院の16名が参加しました。

今年のプログラム構成は、2回のトークセッションと4回の対面/オンラインで行ったミーティングに加え、新たに2回の現場視察を行いました。昨年実施後のアンケートで「もっと対面で会える時間が欲しかった」と声があがり、その声にこたえるべく実現がかないました。

TAMスタジオ2024 連続ゼミナール ここからはじめるアートマネジメント
全日程

視察先はアートの現場や企画の背景がリアルに体験できる場所として、世界中から600人以上の表現者を受け入れてきた、千葉県松戸市にあるアーティスト・イン・レジデンス「PARADISE AIR」と、私自身が企画から制作、実施までを行なっている名古屋城でのアートプロジェクト「アートサイト名古屋城2024」へ行きました。

「PARADISE AIR」では、まちに点在する壁画やレジデンス施設を中心としたまち歩きに行ったり、アーティストを受け入れるユニークな取り組みを紹介いただいたり、また運営スタッフのそれぞれの職能を生かしたフラットな関係性づくりなどをお話しいただきました。

「アートサイト名古屋城2024」では、コーディネーターの近藤令子さんに牽引いただき、作品制作の裏側を話しながらめぐるツアー形式で視察を行いました。視察後に行った鑑賞後のシェアタイムでは、企画背景を知ったうえでの鋭い質問や、率直な感想をもらうことができ、私自身も多いに学びのある時間となりました。

また今年のトークセッションでは、社会と向き合いながらアートとともに実践活動を行なっている、林曉甫さんと奥山理子さんをお迎えしました。

林曉甫さんには「復興するまちで人びとの暮らしをつなぐ」というタイトルで、アートの仕事に至るまでどんなことを考えてきたのか、また大分でアートプロジェクトに出会い仕事をする中で感じたこと。そして、今現在取り組んでいる福島で行なっているプロジェクトなどを中心に具体的なエピソードをお話いただきました。

また、奥山理子さんには「表現とともに社会をほぐす」と題し、ご自身の幼少期からすぐそばにあった"福祉"の領域に身をおきながら、ご自身がアートによって回復していったアートプロジェクトの原体験ともいえるエピソードや、「みずのき美術館」の設立経緯やミッション。また奥山さんの経験や手応えによってかたちづくられていった数々のプロジェクトについてご紹介いただきました。

スタジオメイトの多くが、すでに美術や音楽の分野で問題意識をもっていたり、文化施設でインターンを行なっていたり、自らの手でつくったり奏でたりする表現者です。そんな彼らに、アートを媒介として社会とかかわりを持ちながら、主体的な活動を駆動しているお二人の話は、誰よりも憧れる存在として心に響いたのではないかと思います。

各回、ゲストのお話だけでなく、スタジオメイトからの質疑応答や気づき、ディスカッションの様子など、とてもていねいに捉えたレポートがあがっておりますのでぜひ読んでいただければと思います。

第1回トークセッションレポート
「復興するまちで人びとの暮らしをつなぐ」

ゲスト: 林 曉甫さん[NPO法人インビジブル 理事長/マネージング・ディレクター]

第2回トークセッションレポート
「表現とともに社会をほぐす」

ゲスト: 奥山理子さん [みずのき美術館キュレーター、SW/ACディレクター]

今年も、スタジオメイトの積極的な学びの姿勢が随所にみられました。特にトークセッション後には、学びを深めるため、そして横のつながりがつくられやすいようにと、ワールドカフェ形式でのディスカッションタイムを設けていましたが、時間がきても話が止まらないグループが多くみられました。また、全員で振り返りを行う際にも、言葉を尽くしながら感じたこと、気づいたことを共有してくれました。また、第1回目のトークセッションで林さんが紹介したプロジェクト先やイベントに出向き積極的に参加する姿や、スタジオメイト同士で連絡を取り合い現場視察の前後で別の展覧会へ訪問する姿、後日それぞれの場所で繋がりを深める姿なども散見されました。 

2回目のトークセッション後のレポート「スタジオメイトの声」では、TAMスタジオ通じ「アートマネジメント」を今どう捉えているか率直な意見が掲載されています。ここにぐっときた言葉を抜粋してみます。

『人とアートとの「出会い」をつくり出す』
『アーティストとアートを必要とするひとたちをつなげること』
『芸術と特定の社会にある境界を超えること』
『誰かと協働すること』
『助け合う分野』
『芸術をツールとして人と人をつなぐ』

スタジオメイトには、"つなぎ手"としてのアートマネジメント像がおぼろげに、あるいは、はっきりと輪郭を持って存在し始めていることに心から拍手を送りたいと思います。さぁ、次の2歩目をどう踏み出すかはあなた次第。ここで得た学びや仲間が、自分自身の経験の糧となることを願っています。

(2025年3月30日)

2024年度 目次

TAMスタジオ2024 連続ゼミナール
ここからはじめるアートマネジメント
TAMスタジオ2024
連続ゼミナール
「ここからはじめるアートマネジメント」
ファシリテーター
野田智子さんからのメッセージ
トークセッション
第1回トークセッションレポート
「復興するまちで人びとの暮らしをつなぐ」
ゲスト: 林 曉甫さん[NPO法人インビジブル 理事長/マネージング・ディレクター] ファシリテーター:野田智子さん[アートマネージャー/Twelve Inc. 取締役]
アートの現場視察
第1回 アートの現場視察レポート
PARADISE AIR(千葉県松戸市)
ゲスト: 森純平さん[建築家/PARADISE AIR 共同ディレクター]
うらあやかさん[アーティスト/PARADISE AIR コーディネーター]
ファシリテーター:野田智子さん[アートマネージャー/Twelve Inc. 取締役]
トークセッション
参加メンバー〈スタジオメイト〉の声
アートの現場視察
第2回 アートの現場視察
アートサイト名古屋城2024(愛知県名古屋市)
ゲスト: 近藤令子さん[「アートサイト名古屋城」コーディネーター/アートラボあいち マネージャー/アートプログラムユニット「フジマツ」]
ファシリテーター:野田智子さん[アートマネージャー/Twelve Inc. 取締役]
トークセッション
第2回トークセッションレポート
「表現とともに社会をほぐす」
ゲスト: 奥山理子さん [みずのき美術館キュレーター、SW/ACディレクター]
ファシリテーター:野田智子さん(アートマネージャー/Twelve Inc. 取締役)
トークセッション
第2回スタジオメイトの声
第二歩を踏み出す
TAMスタジオ2024 連続ゼミナール
「ここからはじめるアートマネジメント」をふりかえって
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