動かぬ「糸」になるということ
第1回TAMスクールはアートマネジメントの現場に携わっている方やアートプロジェクトの企画制作の経験がある方など、総勢29名の方々にご参加いただきました。2日間の講義とシンポジウムを通して学んだことや得られた気づきなどの所感を参加者レポートとしてご紹介します。
舞台芸術のマネジメントを仕事にして2年目。TAMスクール参加への志望動機には、自身の問題意識としてアートマネージャーの「孤立感」があると書いた。
初日の講義後に行われたシンポジウムで、今回のテーマでもある「アートウーブメント」の話になった。アートウーブメント(art woven-ment)とは、「プロデューサーがプロジェクトや関与者を"タテ"にマネジメントするだけではなく、さまざまなアビリティを持った人たちが集まって"ヨコ"に協力し合う」= 「織る、編む(weave)」ことが、これからのアートマネジメントのキーワードになるのでは?ということで、アートマネジメント(art management)をもじって生まれた言葉だ(と理解している)。
アートプロジェクトが、もしくはアートの業界全体が大きな"織物"だと考えたとき、「タテとヨコの糸はそれぞれ何を意味するのか?」が、ディスカッションのテーマになった。それぞれの現場を持つアートマネージャーである講師や参加者たちが、各々の思うタテ糸とヨコ糸について話す中、講師の一人である金森香さんの「自分がタテになることもあればヨコになることもある」という言葉にハッとした。タテヨコにかかわらず、動かない糸があるからこそ、織物としての形状を保てる。実際に織物をした経験はほとんどないが、切りっぱなしの布を想像すると、後から織られた端の糸ほど、また他の糸との接点が少ない糸ほど抜け落ちてしまいやすい。
孤立感について考えていたとき、いかに「ヨコのつながりを強化するか」を考えていた。しかし、重要なのは、単純に同世代、異分野との絆や連携を深めるだけではなく、最終的に何を目指すのかを思い描きながら、他者と地道にかかわり続けることかもしれない。自分が端の一本糸に過ぎなかったとしても、動かぬ糸として最終形である一枚の布をイメージし、他の糸との接点を持てば、全体としての強度は上がる。それが意識できているときには、もはや孤立感は感じていないかもしれない。
一人では完成させられないアートプロジェクトだからこそ、その先に思い描く景色を忘れず、周囲の人を巻き込んでいくアートマネージャーを目指そうという思いを新たにした。
「アートウーブメント」については、参加者それぞれが多様な解釈をし、異なるメッセージを受け取っただろう。TAMスクールは、新しい「ことば」が新たなものの見方を生み出すきっかけになること、対話を通してその意味を構築していけることを再認識させてくれた機会でもあった。