文化施設の運営の問題点
地方自治体が設置してきた芸術文化施設、美術館については1970年代以降、また文化会館については、とくに1980年代以降、急激に増加してきました(いまでも増え続けています)。文化会館といっても、その態様はさまざまです。劇場や音楽堂のようなものもあれば、公会堂のようなものもあります。これらの施設については、とくに国で定められた法律はありませんでした。2012年に「劇場、音楽堂等の活性化に関する法律」が制定されることによってようやく、文化会館の内容を表す法律が成立したのです。また皮肉にも、この法律に「活性化」という文言がついていることに現れてるように、この法律はこれまでにあまり活用されていなかった文化会館の活性化を目的にしているということです。1980年代から雨後の竹の子のように建設された文化会館は、当時からその施設活用のあり方について疑問が投げかけられていました。そのような中で、日本の貸し出すことがサービスの基本となっている文化会館から、脱皮しようと新たな施設運営に取り組むところも1990年代になると注目を浴びるようになります。たとえば、創造活動を行う集団を持つ水戸芸術館、静岡舞台芸術センターや、施設のプロデュース能力を強化した世田谷パブリックシアター、さらにはプロのオーケストラとフランチャイズ契約をして会館の特徴を出したすみだトリフォニーホールなどです。その後も地域の文化的拠点となるような運営を展開する文化会館が誕生してきましたが、大多数の文化会館はあまり活用されていませんでした。また、文化会館を活性化するために外郭団体をつくって運営させている場合でも、すべてがうまくいっているわけではありませんでした。
というのも2000年に、文化庁と、総務省の外郭団体である(財)地域創造がそろって公立文化施設の調査を行い、両者ともに文化会館の活性化のための提言を行ったのです。前者の「公立文化会館の活性化に関する調査研究協力者会議」の報告においては、「現在、全国の公立文化会館は、2,031館(平成12年5月現在)あるが、近年の先端的なものを除き、会館の中には、現在、活動が必ずしも活発でないという批判を受けている所も少なくない」指摘しました。その結果、今後の公立文化施設のあり方について、
- 地域特性、施設特性に応じた事業の実施と機動的な運営体制
- 地域・住民に積極的に働き掛け、地域文化の中核的な役割を担う
- 文化会館の芸術文化創造機能や運営能力の高度化を図る
などの提言がなされたのです。そして設置者の役割としては、「地域の状況や会館建設後の運営経費等を踏まえ、十分な検討を行った上で、公立文化会館の設置理念を明確化することが必要である。また、既存の会館についても状況の変化に対応して見直していくことが必要である」とありました。
さらに(財)地域創造では、平成14年には「地域文化施設における財団運営に関する調査」という調査報告を出しました[*1]。この報告書においては最終的に、公立の文化会館を運営している財団運営のあり方について、
- 時代・環境を認識せよ
- すべては『ミッション』からはじまる
- 活力ある財団運営は内部改革から
- 施設を有効に活かせ
- 財団の活性化はわが国文化行政の緊急課題
- 地域や市民に求められる財団であれ
という厳しい提言を出したのです。
これらの提言から見られるように、我が国の公立の文化施設が適正な管理の行われている「公の施設」であったかという視点から見ると、必ずしもそうでなかった現状が読み取れることと思います。
(2013年1月8日)