指定管理者制度導入の背景
この制度改革は、とくに2000年以降顕著だったのですが、政府は規制緩和や民営化を積極的に推進してきましたが、その流れにあることは間違いありません。しかしながら、前述しましたが誤解してはならないのは、民営化を義務づける法改正ではないということです。この制度は2003年に地方自治法が改正されて導入され、3年間の制度移行時期を経て、すでに改正から10年を経たことになります。この制度が導入された当時は、この制度をいわゆる民営化推進法のように捉え、マスコミによっては民営化に照準を定めて、それが進まないことを批判する記事も見受けられました。また行政内部においても、民営化のために犠牲になるかもしれない外郭団体に対して同情的視線を投げかけて、法改正を批判する向きもありました。しかしながら、そのような見方は一面的であるといえます。あらためて、指定管理者制度導入の背景について、考えてみましょう。
2003年度5月27日衆議院総務委員会では、指定管理者制度の導入については以下のように述べられています[*1]。
第一に、「住民のニーズが多様化」しており、それに「効果的、効率的に対応するためには、民間の事業者のノウハウを広く活用することが有効である」ということ。そして第二に、「公的主体以外の民間主体においても十分なサービスの提供能力が認められるものが増加している」ということ、さらに、2002年度の構造改革特区構想の第一次提案の中に、複数の自治体から「第3セクター(公共団体や自治体の出資法人等)以外に、民間企業が地方公共団体の設置した公の施設を管理できるようにして欲しい」との提案が出されたということが理由に挙げられています[*2]。それに対して総務省が「特定の地域に限定せず、一般的な事項として、次期通常国会を念頭に、公の施設の管理受託者の範囲を株式会社等の民間事業者にまで拡大するよう地方自治法等の既定の整備を行う」と回答していたということです[*3]。これに拍車をかけたのが、民間からの要望です。実は、1999年に民間資金等を活用して公共施設等の整備をはかる法律が成立しました(PFI法)。これは、民間の資金力を活用しながら、国や自治体の財政難を救う目玉の一つと捉えられてきました[*4]。PFI事業で建設された施設等については、発注者である地方自治体の設置ということで公の施設の範疇に入ることになり、旧来の地方自治法では民間営利会社は管理運営を担うことはできませんでした。PFI事業は施設建設と運営を一体に考えることにより、その効力を最大限に発揮できる手法であり、事業に参入してくる事業者からの強い要請があったということです。
さて、もう一つ大きな流れとして、地方分権があります。前述しましたが、この制度の導入方法については、それぞれの地方自治体に任されています。これまで箸の上げ下ろしにまで介入してきた国の権限を、地方自治体に分配するのが分権化です。したがって、地方自治体が自主的にその運用の仕方を自由に決めることができるようになっているのは、まさにこの地方分権化の流れに沿ったものだといえます。さて、これまでに述べてきたのは総論的な背景です。それでは各論的にみてみましょう。文化会館について、この制度が導入される以前はどのような状況にあったのかということです。
(2013年1月8日)