Q&Aその2
自治体のなかで、2020年を意識して文化政策展開をしようとしているのは、新潟市とさいたま市です。新潟市は2015年7月第3回目の「水と土の芸術祭」を開催します。さいたま市も、2016年に「さいたまトリエンナーレ2016」開催を計画しています。こうした国際的な芸術祭の取り組みによって、オリンピック・パラリンピックの文化プログラムを一気に加速させようという戦略です。
一方で、地元の民間ではいくつかの動きがあるものの、ほとんど動きのない行政も多く、八戸市、沖縄県などが、こうした民間の動きに呼応した文化政策を展開することを期待したいものです。
また、いくつかの企業が現在2020年に向けた文化戦略を検討中。そのなかで筆者が最も着目しているのが、都市の創造拠点開発です。近年産業遺産の重要性がようやく認識されるようになってきましたが、世界的に貴重な遺産だけではなく、全国の企業が所有している遺産には、創業者の邸宅や古民家なども含む、膨大なものがあります。それらのなかには、遊休資産として処分され、消滅するものも少なくありません。こうした貴重な遺産を創造拠点として活用し、次世代育成の観点から若手アーティストと市民の幅広い創造活動に提供するなら、まさに、オリンピックで最も重視されている「レガシー」の最たるものになるでしょう。かつて、アサヒビールが京都府と協働して、実業家の山荘を保全活用するために購入し、「アサヒビール大山崎山荘美術館」として、創造拠点に活用した事例もあります。こうした事例が、2021年に全国で多数出現することを心から願っています。
(2015年7月5日)