ファンドレイジングの5つのポイント
ファンドレイジングのポイントを以下の5つにまとめてみました。
1.共感から理解、そして行動へつなげること
複数のNPOから寄付を募られたとき、あなたならどんな団体を選びますか?
日本ファンドレイジング協会の『寄付白書2010』(経団連出版)の調査によれば、寄付先を選ぶ際に重視することは?との問いに対して一番多かった答えは「活動の趣旨や目的に賛同・共感できること」でした。
そもそも、人はどういう気持ちで寄付をするのでしょう? キーワードは「共感」。
飢えた子どもたちの話を聞いて、そういう子どもたちに支援が必要だと思う人がほとんどでしょう。ここまでが共感の段階です。ただ、この入口がないと次のステップにつながりません。まずは共感していただかないとなりません。
しかしながら、そう思った人の全員がそのような子どもたちを支援する活動に参加する、あるいは、そういう活動をしているNPOに寄付をするとは限りません。社会の課題の解決の重要性を感じても、その解決法が提示されなければその活動を支援しようとは思えません。論理的に解決方法が示され、その実績や実行可能性に納得感がなければ寄付という行動には結びつきません。
そう、いわゆる「右脳から左脳へ」の流れが必要なのです。感情的に共感してもらって(右脳)、その課題解決方法を論理的に理解して(左脳)、はじめて人は行動するのです。
2.多様な参加のチャンスを提供すること
「このNPOを支援したい!」と思った人の「こういう形で支援したい」という気持ちはさまざまです。単発的に寄付をしたい人、継続的に寄付をしたい人、会員となってNPOの運営にも関与したい人、お金の寄付をしたい人、物品で寄付をしたい人、ちょっとした特典を望む人、使途を限定して寄付をしたい人...こうした気持ちに応えるように寄付のメニューは豊富に用意した方がよいでしょう。もちろん、金額にもバリエーションを持たせて、できるだけ多くの寄付者の気持ちを受け入れられるようにしたいものです。
3.さまざまな送金方法を用意すること
決済方法が「郵便振替のみ」だったら、郵便局に行くのを先延ばしにしていているうちに寄付をしそびれてしまったりする人が出てくるかもしれません。郵便振替、銀行振り込み、クレジット決済、コンビニ決済...最近はNPOでも活用できる決済方法が増えてきています。
会費についても自動引き落としを用意しておくと継続率が高まります。年会費だけでなくマンスリーでの引き落としなども負担の少ない会員制度として喜ばれます。
寄付者の利便性を考えて決済方法をいろいろ用意しておくことが必要です。
4.寄付集めのツールを整えること
寄付集めのツールとしては、団体紹介パンフレット、寄付集めのチラシ、依頼状、寄付メニューを紹介したホームページ、事業報告書などがありますが、いずれにせよ、「右脳から左脳へ」伝えることのできる寄付集めのツールを用意しなければなりません。
ツール作成のポイントとしては、とにかくわかりやすいこと。文字の大きさ、漢字、言葉遣いなどに配慮せねばなりません。内容も、そもそも興味や知識がない人が読むことを前提にわかりやすくしましょう。さらに、さまざまなツールをつくる場合には統一感も大事です。違ったツールを通して団体の良い活動イメージが心に蓄積されるようなツールの開発ができるといいでしょう。
5.成功事例から学ぶこと
自分たちと同じような団体のファンドレイジングの成功事例を探してみると、すぐに取り入れることのできるアイディアに出会えます。また、分野や規模が違う団体の成功事例からも学ぶことはたくさんあります。たとえば、熊本県の熊本城再建のための寄付集め。行政が主体となっていて金額規模も大きなキャンペーンですが、「一口城主」というコピーや寄付者の名前を天守閣に掲げて称える仕掛け、ちょっとした特典の用意など、さすがと思わせるものがあります。
こうした5つのポイントをふまえることで、効果的なファンドレイジングが可能になります。最終回の次回は、アートの世界のファンドレイジングについて考えます。
(2012年3月15日)