助成申請をする
助成金を活用するタイミング
前回の記事では助成金の活用の意義と数多くの助成プログラムがあることをお伝えしましたが、今回は助成申請にスポットをあててお伝えします。助成金を活用する際には、団体としていつ利用するかということも大事なポイントです。助成申請をしたときに「なぜ助成金が必要なのか?」と必ず聞かれます。その答えの際に団体や活動を発展・成長させていくために助成金を活用するという考え方が必要です。5~10年くらいの中長期戦略の中で、どの成長ステージで、どのくらいの助成金を活用して発展していきたいのかという考えを持って、助成申請をしましょう。
次の5つのステージでどのくらいの規模の助成金を活用して成長していくのかを考えます。ステージが上がれば、対象となりうる助成金額も大きくなります。
①芸術文化の活動を始めた立ち上げ期
②活動を持続するために専門性を高める事業確定期
③公演活動を継続的に実施していく事業継続期
④従来の事業のほかに新しい地域や活動に取り組む新規事業展開期
⑤モデル事業として先駆的な取り組みを行う社会影響期
助成申請の考え方
実際に助成申請はどのようすればよいのでしょうか。助成申請が上手な団体は、申請書の書き方ではなく、助成申請の考え方を知っている団体です。
申請する側である団体の多くは「活動」のための資金がほしいと思っています。実際の申請の際に、普段の活動を申請事業の内容として記載することもあるのではないでしょうか。一方、助成する側は「事業」のための資金を提供したいと考えています。普段の活動ではなく、助成申請のための特別な事業を求めています。助成金の意味を辞書で調べると「事業の完成を助けるお金」となっています。申請事業は事業の完成の目標を設定できるものとして計画しなければならず、助成金は「普段の活動を助けるお金」ではありません。この違いを認識することが助成申請の第一歩となります。したがって、申請事業は新規事業か、もしくは普段の活動や事業を発展させた事業になります。申請事業には、次のような視点で考えられた内容が必要となります。
- 一定の期間内に達成しようとする成果目標が設定されているもの
- これまでの経験をもとに、新しい試みが盛り込まれているもの
- 団体、受益者、地域、社会、未来によい影響を与えることを目指すもの
あわせて、事業で生み出した成果やノウハウ、人材等を活用して、助成事業終了後も同じ事業を継続して、成果を生み出していく仕組みが盛り込まれていることも求められています。
助成申請によるコミュニケーション
助成申請とは、自分たちが考える事業に関して、社会のニーズと実施手法(もしくは公演など)の実効性を資金の出し手に理解してもらうことです。自分たちが伝えたいことを一方的に伝えるものではなく、資金の出し手が知りたいことを伝えるためのコミュニケーションです。基本は、申請書の各項目について、資金の出し手が何を知りたいのかを意識し、聞かれたことにしっかりと答えることです。加えて、①具体的な事実、②現場の活動の中から生まれた気づきや問題意識、③事業を考え出した思考のプロセスの3点を盛り込むことで、地域や活動のリアルを伝えていきましょう。全国規模で募集している助成プログラムの場合は、審査する側が地域の状況をイメージできるような情報も必要となります。
芸術文化の助成プログラムでは、芸術文化の振興か、芸術文化を通しての社会貢献、このどちらかが期待されています。申請書を通じて、それが達成できるということを理解してもらう必要があります。さらに、助成財団は、申請団体のその先に「 受益者となる地域や市民」 を、申請事業のその先に「助成終了後の状況」という、二つの「その先」を見ています。団体や事業のアピールだけではなく、「その先」もイメージしてもらえるように意識しましょう。
おすすめの1冊
- ソシオ・マネジメント 第4 号「成果を最適化するための助成プログラムのコミュニケーション調査」(IIHOE[人と組織と地球のための国際研究所] )