助成金の活用という視点
変化してきた「助成金」
ここ10年の「助成金」の変化としてアート活動の拡張があります。福祉やまちづくりをテーマとした助成プログラムの助成事業にアートを活用した事業が増えてきています。ネットTAMの助成金情報の検索データベースには、福祉、地域活性化・まちづくり、学術・研究、環境、保護・保存、災害等のキーワードが設定されています。アート活動が芸術文化分野の助成だけではなく、他分野の助成でも対象になってきていることの現れです。アート活動の助成金を探すには分野の枠を超え、幅広い視野で探すことも重要です。但し、芸術文化分野以外の助成を活用する際には、純粋に芸術文化の振興だけを目的とするのではなく、その助成プログラムのミッションを意識した事業づくりが必要になります。
この講座では、芸術文化助成に特化せず、拡張するアート活動を踏まえて、広義な意味のNPO・非営利組織が活用できる助成についてご紹介します。
なぜ、助成金の獲得ではなく、活用なのか?
助成金の獲得はあくまで通過点であり、ゴールではありません。助成金を獲得し、その資金をどのように「活用」して、団体や活動の発展に、あるいは継続的な芸術文化の振興や社会をよりよくしていくことにつなげていくかが大事です。つまり、助成事業が終わった後の発展や展開、持続性を意識する必要があります。こういった視点を持つことで、申請する事業内容も変わってきます。「助成は投資である」とよくいわれますが、助成事業による成果とともに、事業終了後に持続的に成果を生み出すこと、リターンが大事になってきます。
助成事業終了後も同じような効果・成果を生み出す仕組みを考え、その仕組みを申請事業の内容に反映させることが助成金獲得の近道になると思います。多くの助成金が単年度の支援で、助成金は継続して得られる資金ではありません。助成機関は1回限りの支援で、助成先団体に対してその後の継続的な活動や成果を出していくことを期待しています。そうした助成金の出し手の思いをくみとった助成申請が必然的に優先されるでしょう。
助成金の付加価値の活用
助成金をお金としての経済価値だけで考えるのではなく、助成金が持っている付加価値と可能性に着目し、その付加価値を最大限に活用する視点も必要です。資金提供者である助成財団や自治体が持っているノウハウやネットワークはぜひ活用したい大きな付加価値です。たとえば、助成財団には先駆的な活動を行っている団体やさまざまな専門家とのネットワークがあります。助成事業に関連すれば、そうした団体や専門家を紹介してもらうことも可能です。また、アート活動や公益活動に関するさまざまなノウハウや知見が蓄積されていますので、事業づくりのノウハウを教えてもらうこともできます。さらに、助成財団等から助成金を得ていることは大きな実績となり、信頼度向上につながります。そういった信頼・信用という付加価値を積極的にアピールに活用することも大事です。
助成金活用のための助成金カレンダー
助成金を活用するためには、助成プログラムに関する情報収集が必要です。NPOが応募可能な全国規模の助成プログラムは350件以上あります。芸術文化分野の場合、ネットTAMの助成金情報によれば約100件あります。図表は全国規模の助成プログラムの募集時期を調べたものですが、一年を通じて募集があります。
助成申請のためには公募の半年前から準備を開始したいものです。事前の準備にしっかり時間をかけ、助成プログラムと自団体のミッションをかけ合わせながら申請事業の内容をじっくり検討することが大事です。そのためには、数多くある助成プログラムの中から、自団体で使えそうな助成プログラムをあらかじめ30個程度ピックアップして、いつ募集を行っているのかがわかる助成金カレンダーを作成することをお薦めします。たまたま見つけた助成プログラムに応募するのではなく、しっかり準備をして助成申請に応募しましょう。
(2020年1月9日)