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アートに触れるきっかけを圧倒的につくるミューラル(壁画)

アートにかかわる人たちがアートを続けるためにどのような方法があるのか?ネットTAMでは今回「起業」に着目し、実際に会社を興し、さまざまな事業形態でアートを持続させている方々に、"アートの興し方"についてお話をうかがい、ヒントを探ります。

第2回は「ミューラル」(壁画)のプロデュース企業のWALL SHARE株式会社 代表取締役の川添孝信さん。同社のミッションは「Innovation from the WALL」、ビジョンは「人とアートを繋ぐきっかけを圧倒的につくる会社になる。」です。

WALL SHARE株式会社
本社所在地:大阪府
設立年:2020年
資本金:2,348万円
従業員数:5名
主な事業:ミューラルのプロデュースを主軸にした各種アート事業
※2024年3月1日現在

MURAL TOWN KONOHANA by Dan Kitchener

現在、WALL SHARE株式会社で実施しているアートによる事業とは

「ミューラル」と呼ばれる”壁画”のプロデュース事業を行っています。ミューラルは日本ではまだ馴染みが薄いカルチャーですが、海外では多くの企業による活用や、まちづくりで活躍をしています。そのミューラルをWALL SHAREはこれまでに130作品以上手掛けてきました。国内外の120組を超えるミューラルアーティストとともに、まちの壁を彩り、子どもから大人まで誰もが気軽にアートに触れるきっかけを届けています。

私がアートの事業を展開する中でよくいわれる言葉にある「私、アートに詳しくなんですけど」という枕詞のような発言。アートの関係者の方であれば一度はいわれたことはあるのではないでしょうか。アートは詳しくないと語ってはいけないのか? きっとそうではないはずです。まちそのものに描かれるミューラルは、アートに出会い、触れるハードルを究極に下げることができる存在だと日々感じています。そんなミューラルで「アートに触れるきっかけを圧倒的につくる」事業を行っています。

なぜ起業したのか?

大きくは2つの理由があります。

1つ目はそもそも私自身がミューラルの属するストリートカルチャーを10代のときから趣味として好きだったこと。きっかけは日本語のラップを聞くようになったことです。当時一緒に楽しめる友達は少なかったのですが、社会人になり海外旅行に行く友達のSNSにはミューラルの写真がアップされていました。自分が日本で広められる立場になったら、日本でも楽しめる人が増えるんじゃないか、それおもしろいかも。そんなきっかけが最初のスタートです。

2つ目は企業の構想を進める中で日本が世界のアート市場に対して想像以上の遅れをとっていることを知ったことになります。感覚的にも日本人の多くはアートに対して「難しい・わからない存在」と受け取っている人が多いのではと感じています。まずはアートに触れるきっかけが必要で、その最強の手段の一つがまちに存在するミューラルだと可能性を感じ、起業を決心しました。

起業したメリットとデメリット、そして今抱えている課題とは

メリットは叶えたい世界感に向かって突き進めることですね。僕の場合はミューラルという中々ない仕事なので、起業しか選択肢がありませんでしたが、必ずしも起業が正解とも思っていません。課題は大小で数え切れないくらいありますが、デメリットとは思っていません。課題に出会えていること自体が起業のメリットだと思っていますし、都度エネルギーに変えて、カッコイイミューラルを増やします。あえての課題をいうならば、もっと僕らを知ってほしい! 足りない! 笑。頑張ります。

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HANASAKA MURAL by PHIL

これからやってみたいこと

「身体が動き続けるまでミューラルを増やし続けること」です。

壁に描くことに拘りをもったアーティストの作品、壁のロケーション、クライアント企業が求めることなど、同じような条件は存在せず、ミューラルができ上がるたびにフレッシュな気持ちになります。自分の好きなアートなのでそりゃそうですよね、辞められません。

またその結果にもなりますが、1番の目標は「子どもたちにアートを届け続けること」ですね。日本でアートに興味を持つ人がすぐに増えることは中々難しく時間がかかると思います。子どもたちがアートに触れて、大人になり、その循環が生まれていった結果、日本のアートにとってポジティブなステージができていくのではないでしょうか。そんなことを夢見て、増やし続けます。一生。

応援メッセージ~これからアートとかかわり続けるためにどうするか?

「リスペクト」の精神だと思います。

絵を描くことに日々向き合っているアーティスト、キュレーター、クライアント、アートを楽しむ人、これから楽しむ人。ただでさえ市場が小さい日本で、アートという共通の目的地で出会った人たちが、お互いにリスペクトを持っていけば、さらによい作品や企画が生まれると思います。

(2024年2月20日)

今後の予定

  • 某国の貿易庁とのミューラルプロジェクト
  • 日本最大規模の800平米以上のミューラル
  • 世界中のアーティストが集まるミューラルプロジェクト

関連リンク

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自分の5歳の息子のアート作品です! 5月に個展をするのでチェックしてください。 Instagram(@gaku_art3)

アートとかかわり続けるために、なぜ起業したか? 目次

1
コロナ禍から立ち上げた文化芸術界に特化したジョブフェア
2
アートに触れるきっかけを圧倒的につくるミューラル(壁画)
3
アートをビジネスにするということを問い続ける
4
創造力を社会実装するアーツプロダクション
5
大阪・関西の成長戦略として芸術祭を創造する
アート×ヒト×社会の関係をSTUDYする「Study:大阪関西国際芸術祭」の可能性
6
アートを通じて架け橋を築く
7
プリコグ:公益性を追求する経済活動としての社会実験
8
『ティール組織』という理想を、絵に描いた餅にしない実践
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