アートの環境
イコールは北陸のアートイベントのスケジュール、特集記事、連載、金沢アートマップをまとめて隔月で発行しているフリーペーパーです。それ以外にも対談イベントを企画したりもしています。普通アートマガジンというものはアートが好きな人に向けて発行されているでしょうがイコールはちょっと違います。イコールはあくまで出会いを創出するメディアでありたいと思っているので、アートに興味が無い人に向けて発行しています。それと同時に百年先の人にも発行しています。
僕は緑化技術者でもあり、壁面緑化などを稼ぎとしています。近年、緑化が流行していますが、これは悲しいことだと思っています。流行は必ず流れて行く。春に新しいと言っていたものがヘビーローテーションでメディアに登場し、夏には飽きられたり、それは古いから買いなおしましょうと言われてしまう。スペックと目新しさだけを延々と追いかけるのが流行です。そんな仕事に愛があるとは思えません。新しいとか古いとかを超えた愛されるものを作りたいと思っています。
G-WING'Sギャラリーエントランス |
アートだって同じです。流行りを追いかけて売れる(人気が出る、人が集まる)ことにはあんまり興味が無いのです。しかし、多くのメディアは流行や目新しい情報を取り上げます。それは読者がそれを求めるからです。その時に人気が出るか。その時に広告効果が出るか。そういった価値判断に偏ります。「その時」という短い時間の範囲でしか話がされていない。そこで出てくるのが百年先の人です。今日の流行りや目新しさは通用しない人に向けてメッセージを送る。そう考えるようにしています。百年と聞くと長いように感じるでしょうか。僕は確実に死んでいるでしょうが、僕の子供(今日現在は影も形もありませんが)は生きているかもしれません。その程度の未来です。僕は環境なんてものをテーマに仕事をしているから、そのくらいの時間感覚になるのかもしれません。
「今」「ココ」ではないと想定して、例えば百年後の人の気持ちで、何を残してほしいか。当然、よい作品を残してほしい。しかし「残る作品こそがよい作品」というと、ただ無責任に結果論で話をするような気分になります。歴史の淘汰に生き残ったものが優れた物だとは考えていません。けれども、それを説明するには、ちょっと勉強不足ですみません。
キキョウを使った室内インスタレーション |
正直に言ってアートなんてわかっていません。それでもアーティストと呼ばれる人の作品制作や管理を技術的にサポートしたり、ギャラリーでの企画展をプロデュースしたり、アートのフリーペーパーの編集もしている。核であるアート自身についてはアーティストにお任せして、その周りのあらゆることを引き受ける。中身の抜けている僕を埋めるアーティスト。僕の中にいれば(結果的に)守られるアーティスト。こう表現するとなんとなく愛がありそうな気がしませんか。
仕事(ビジネス)に愛や人間味が失われているとか言われていますし、そう感じる出来事もたくさんあります。そのことを嘆いたり、憤ったり、責めたりするのは愛が無いと思っています。社会をオカシクしたとされる人たちでも少しは愛してあげてほしい。そうでなければ社会にはもっと愛が無くなります。「誰か」や「システム」が悪いと主張する人は、自分も社会の一員だという自覚が足りないんじゃないかと苛立つ時もあるけれど、それを責めるのは、やっぱり愛が足りない。社会を少しでも居心地よくしたいのは誰でも同じでしょう。スケールはそれぞれ違うでしょうが、居心地をよくするための活動をマネッジメントと呼んでいるのであれば、もうマネッジメントと呼ぶのをやめようと思います。居心地をよくする活動はマネージャーに任せるものではなくて、みんなが参加しなくてはいけないことだから。
(2009年7月20日)
次回執筆者
バトンタッチメッセージ
大きなものに寄ってしか立てない人は本当の大人だろうか。有利な状況だったらやり、不利な状況だったらやめる。そんな大人にはなりたくなかった。けれど周りを見渡すとそんな大人ばかりが目に付く。地方をベースに自分で立っている大人の宮本さんは僕に勇気を与えてくれます。