アーティスト集団のすすめ
このリレーコラムの読者の中には、これからアートに関わっていこうとしている人たちが多くいるのではないかと思います。僕は画家であり、その傍らで「C-DEPOT」というアーティスト集団の代表もしているため、作品を作る側と、企画する側の両スタンスでアートと向き合っています。その両方の視点から僕の仕事を軽くご紹介したいと思います。これからアートに関わっていこうとしている人にとって、一例として少しでも参考になれば幸いです。
2007年にスパイラルで行った展示風景です。 |
自由に表現できているか
僕は幸運にも絵で生計を立てていけています。人に言うとよく驚かれるのですが、僕の周りには「プロの絵描き」という人が結構います。「アートで喰う」というのは決して夢物語ではなく、強い意志で実行すれば何とかなってしまうものなのです。ただしこれまで「好きで楽しい」だけで描いていた絵が、「仕事」に変わる瞬間が必ずあります。多くの人はこれに戸惑うものです。作品がお金に換金されて、人々の間で売買されるわけですから、僕も何だか悪いことをしている気分になったものです。
ただしばらくして、作品を発表し販売することは、作る人(作家)、売る人(画商)、買う人(コレクター)、皆がハッピーになることなんだと気づきました。さらに経済が活性化されるというおまけ付きです。当たり前といえば、当たり前なのですが、多くの若いアーティストは作品を売ることに背徳感を覚えるもののようです。
では、好き勝手制作したものが売れるのかというと、そうでもありません。バカでかい作品は個人宅では飾れませんし、多くの場合は額装しなければいけませんし、保存(耐久性)の問題があったりと、美術業界特有のルールが多く存在するのも事実です。また一度評価されたら、なかなかその作風を変えることはできなくなるでしょう。
このように一見自由に描いているようでも、実は多くの縛りが存在しています。その縛りの中で、関係者の要望に応えつつ、自分の表現を追求すること。これがなかなか難しいのです。
アーティストが自ら作品の説明し、来場者とのコミュニケーションを行っています。 |
異ジャンルで集まってみる
僕自身は制約の中でがんばるのも好きなのですが、たまにはそれを解き放ち自由にやりたい気持ちもありました。それがアーティスト集団C-DEPOTを発足した理由の一つです。
2002年、学生当時「何かおもしろいこと」がしたいと思い友人と始めました。「とにかくいろんなジャンルの人を集めよう」ということで身近な知人から声をかけて、その知人が知人を紹介し、どんどん人数が増えてきました。
こうして、絵画、イラストレーション、立体、工芸、映像、メディアアートといったさまざまなジャンルのアーティストによって構成されているアーティスト集団が誕生しました。僕たちは会場を借りて展覧会を開催しました。最初は、学生のグループ展のような規模での開催でしたが、回数を重ねていくうちに、多くのことを学び、アーティストとして、また展覧会運営の経験を積むことができました。目的も自分たちだけではなく、観る人とも「おもしろい何か」を共有することに変わっていきました。
ワークショップ型の作品です。大人から子どもまで楽しみました。 |
多様な表現から見えてくるもの
発足から7年目の今年、C-DEPOTはのべ60名を越えるメンバーと、来場者7000人に迫る展覧会を企画するようになりました。それぞれのジャンルで活躍する者も多く、仕事をシェアしたり、共同で作品を制作したり、企業とコラボレーションしたり、さまざまな化学反応が日々起こっています。こうした化学反応は同じ畑の中にずっといたままでは起こり得ません。たまたま隣の畑に足を踏み入れたら、思いのほか肥えた土壌だったりするものなのです。
同じアートでも、少しジャンルが異なるだけで、習慣や価値観がまったく違っていたりします。その違いを拒絶せず、「おもしろい!」と思えるかどうかが重要で、来場者にさまざまなアートの在り方を知ってもらうことが、アートファンの裾野が広がっていくのだと信じています。
僕はアーティストなので、アーティストの視点でどのような活動が自分たちにとって一番理想的かを突き詰めて、現在の形に至っています。自由な表現が最優先、社会性や時代性は二の次。難しい展覧会はその道の専門家に任せて、まず自分たちがワクワクして楽しむこと、そしてそれを来場者と共有すること。それが僕にとってのアートマネジメントです。
C-DEPOTメンバーの集合写真です。 |
(2009年5月22日)
今後の予定
「EXHIBITION C-DEPOT 2009 -message-」
会期:2009年7月22日(水)〜26日(日)
会場:スパイラルガーデン
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いまやほとんど電話機としては使ってません。
次回執筆者
バトンタッチメッセージ
アートの魅力に気づき、多くの人にそれを伝えるために会社まで設立してしまった熱い女性です。
活動も幅広く、アート業界を盛り上げていこうとしている姿に、いつも刺激を受けています。
ぜひご期待ください!