ゼロダテの「この街と歩く」から 「じぶんで みんなで この街で」に続いていくこと
ゼロダテ アート プロジェクトとは
「ゼロダテ」は大館出身のクリエーターが自発的に立ち上げたアートプロジェクトです。世代やジャンルや社会的地位さえも越えた活動を展開していきます。
ゼロダテ(0/DATE)とは、DATE(日付)を(ゼロ)にリセットし、もう一度何かを始める、新しい大館を創造するという活動です。大館を想う気持を共有し、それぞれの「大館」とともに歩き始めること。
「大館」のローマ字表記「ODATE」の「O」に斜線を引くことによって、「ODATE(大館)」が「0/DATE(ゼロダテ)」、ゼロの日(出発点)と意味を変える。一筆入れただけで意味を変化させるというそれは、アーティストが少し手を加えただけで既存の意味を変え、そこに新しい意味をもたらすということに似ています。
ゼロダテ/大館展2008 チラシデータ |
ゼロダテ/大館展2008 マップデータ |
ゼロダテ/東京展2007 「ゼロダテ アート ユニット」
世代の違う、異なるジャンルで活躍している大館出身のクリエーターがユニットを結成しました。大館出身の20代漫画家・普津澤画乃新、大館出身の30代デザイナー・石山拓真、大館出身の40代美術家・中村政人で、負のエネルギーを正のエネルギーに変えるべく立ち上がりました。「大館に斜線を加える」、そのことによって大館はどう変化するのか。それは新たな始まりであり、「ZERO-DATE」(ゼロの日)出発点でした。
2007年1月に東京で開催された「ゼロダテ展」では旧正札竹村をテーマにし、東京在住の大館出身者をはじめ、たくさんの方に来場していただき、大きな反響を得ることができました。その中で、地元大館に対する想いだけではなく、全国的に問題となっている地方都市の今後のありかたに対する多くの貴重な御意見をいただくことにより、この「ゼロダテ」というアートプロジェクトの可能性を確信いたしました。
ゼロダテ/大館展2007 「この街と歩く」
2007年8月「ゼロダテ/大館展2007」が手作りの市民活動として大町商店街で開催されました。約20の空き店舗、40のフロアーを使用して、120人以上の作品出品者による大型の展覧会は大きな反響を得ることができました。中には20年以上開いていないシャッターを開けた店舗もあり、市民に「ゼロダテ」という言葉が浸透しはじめました。
ゼロダテ/東京展2008 「北東北アートネットワーク」
2008年5月、2回目のゼロダテ/東京展が開催されました。今回は、大館を中心に北東北(青森・秋田・岩手)まで地域を広げ、「北東北アートネットワーク」の構築をしました。1〜2時間で行き来できる距離に位置する隣県と、行政区域を越えた文化・芸術的交流を生み出すことで、新しい人的交流、文化的価値観を見出し、広範囲な視点からまちの活性化をめざしたのです。このネットワークは現在も拡大し続けています。
北東北の30名以上の若手作家が参加し、交流を深め、グループワークにより「地域」をテーマにした作品を作り上げました。
ゼロダテ/大館展2008 「じぶんで みんなで この街で」
ゼロダテは、新しい表現にチャレンジするアーティストのエネルギーを、まちや商店街に伝え育む試みです。大館市では初の試みである「アーティスト・イン・レジデンス」のプログラムは、参加するアーティストとともに、新しい文化的メッセージを創り上げていくプロセスでした。
秋田県大館市山田は、白神産地の麓に位置しており、本物の自然が深く残っている豊かな地域です。ゼロダテ/大館展2008は、今年廃校になった130年あまりの歴史を持つ山田小学校でのアーティスト・イン・レジデンスを中心に、昨年まで商店街の空き店舗だった場所をスタジオ・展示会場として使用した美術展となりました。緑に囲まれた、ゆったりとした暖かい時間が流れているこの校舎に滞在し、廃校後の使い方の可能性を社会実験。いろいろな地域から集まってきたアーティストと、お互いの考えを話し合いました。
中心市街地から郊外の自然に囲まれた田舎でのレジデンスと伝統芸能。小学校の近所の方々が、近くの畑で朝取れたばかりの新鮮な野菜を毎日提供してくださいました。それはおいしい野菜だけではなく、田舎の住民とのコミュニケーションとなりました。
廃校、過疎化にともない廃れかけている400年以上の歴史を持った伝統芸能「山田獅子踊り」に、練習から毎晩の飲み会にまで参加し、閉ざされた伝統に対して新たな可能性を見いだしました。
このまちでこの空間でしかできないことを、いまの瞬間に形・色・アイディアに置き換える行為は、このまちに新しい希望と勇気を与えるメッセージが宿ります。
そのほか地域の行事にあわせてのイベントや、2008年6月からはZAC(ゼロダテ アート センター)がコミュニティカフェを定期的に開催しています。
自分が生まれ育った地域でのアートプロジェクト
ゼロダテは、美術館やキュレーターではなくて地元出身のアーティストが自発的に立ち上げた、地域再生を目的としたアートプロジェクトです。
それは、今までさまざまな地域で開催されてきたどのアートプロジェクトともまったく違った意味合いがあります。自分の両親や昔からの友人など、まったくといっていいほど「アート」に対する概念を持っていない人たちと一緒に活動することは、アーティストが社会で何ができるのかを再確認できるものとなってきています。専門のスタッフと最初からアートを認めている人たちと一線で活躍する有名なアーティストで創られるものとは、まったく意味が違います。そこにはアートが無くても生活はできるだろうし、まちのことを考えなくても生活できるということがあります。しかし、ゼロダテを通じて少しでもまちについて考えてみる機会になればと考えています。
アートプロジェクトをつくるということ
ゼロダテにとって、それは地元にいる若者がもう一度夢を持てる社会を自分たちで創造することだと思います。特に、アーティストやミュージシャンを夢見ていたけれど地元にいてはどうにもできなくなったり、東京に行かなければかなえられない夢だとあきらめかけている若者が、ゼロダテを機会にもう一度夢見ること。「自分がこのまちについて考えてもこのまちは変わらない」という絶望から、希望を見いだすことです。専門のスタッフと一線で活躍するアーティストとお金。これで一度成功したとしても、その一つでも欠ければ継続できないでしょう。
またある程度完成されたアーティストより、いま悩んでいるアーティストと現場でもがき続けたいと考えています。
サビコレ(ゼロダテ/東京展2008 ゼロダテ/大館展2008出品作品)
「サビコレ」という作品は、私の中でさまざまなアートプロジェクトに関わってきてその疑問や思いを作品化しています。小さな試験管の中に、サビが大切に入れてあります。その試験管には地名が記載されています。写真や映像ではあまりにもリアルに伝えすぎてしまうけれども試験管の中の「サビ」は見る人の記憶の中の光景を蘇らせます。現場から採取した「サビ」を「記憶のかけら」に見立て表現します。
同時に、この作品には、パフォーマンスとして「まちのサビを落す」というメッセージも込められています。会場の中央にある金庫は、この会場である「大館食品デパート」の昔の金庫です。そのサビをひたすら落とすパフォーマンスを映像作品として発表しました。一見無駄な行為かもしれませんが、その行為の痕跡は確実に残るのです。いくらサビを落としても元通りにはなりません。表面を削っているにしか過ぎないのかもしれませんが、それでもやり続けるのです。
SEVEN DOGS 〜7人の犬〜
北海道・道都大学在籍中は、学生主体のアートプロジェクトを、企画・運営・デザイン・アーティストとすべて自分たちでつくるというものでした。この頃SEVEN DOGSというアーティストグループを設立し、現在でも活動を続けています。
そのグループは決して精鋭部隊ではなくて、7人の犬「DOG」(ろくでなし・負け犬)が集まったグループです。しかし「DOG」というスペルを逆さまにすると「GOD」というスペルになります。つまり「馬鹿と天才は紙一重」のような意味です。
いまになって思うことがあります。道都大学は全国の美大の中でも無名に近いかもしれません。しかしだからこそ、自分たちで何かやらなければという危機感がありました。だからその中で自らが先頭を切ってできたのだと考えます。有名な美大などでは埋もれてしまっていたかもしれません。
しかしそれが、現在では東京藝術大学美術学部教育研究助手として勤務していることを考えると、複雑な気持ちです。油画科の中では藝大出身ではない助手は史上初とのことで、まさに「紙一重」です。
2000年 SiNORO Art Project(北海道札幌市北区篠路)
「鎖国 Uncommunication」
体育館ほどのタマネギ倉庫に地域住民から集めた畳40枚で「鎖国 Uncommunication」ブースを鎖国することから始まりました。約半年の時間を経て開国へと向かうその中で、さまざまな作品が展開されました。SiNORO!-T、Movie「ヌードゲーム」、ファッションショー「第二次鎖国文化」、「鎖国缶詰108」。
20代の自分たちにとって、すぐにコミュニケーションという言葉を使うのには抵抗がありました。実際、近所の人ともコミュニケーションはとれていないのですから。地域再生を目的としたアートプロジェクトについて疑問を投げかける意味でも、私たちはあえてコミュニケーションをとれない状況をつくり、コミュニケーションの大切さを伝えるとともに、日本の鎖国文化について再考してみるプロジェクトとなりました。
2003年 CET03(TOKYO DESIGNER BROCK CENTRAL EAST)
「SUIDO catch and release」水道橋第2第3原島ビルへの提案
建築・デザイン・アートなどさまざまなジャンルで既存のビルに対して提案を行うもの。
「SUIDO catch and release」とは、日本橋川の水面に映るまちの明かりを映像で撮影し、もう一度日本橋川にプロジェクションするという企画です。
2004年 CET04(TOKYO DESIGNER BROCK CENTRAL EAST)
「WATER DIVISION TANK」(東神田豊島ビル 屋上・東京千代田区東神田)
この周辺をリサーチして気づいたことはビルの上に貯水タンクがたくさんみられるということです。日頃うつむきながらまちを歩いていては気づきません。
その貯水タンクをひたすら収集していくと、貯水タンクの意味だけではなく、都市における水道や概念化されたメッセージが見えてきます。
2005年 CET05(TOKYO DESIGNER BROCK CENTRAL EAST)
「Otohime Project」(星徳ビルB1階・東京都千代田区内神田1-18-13)
CET03から都市の水道に関しての三部作になる最後の作品は、男性の9割が知らない、女性の9割は知っている「音姫」がテーマ。トイレに設置されたスピーカーから擬音を流すそれは、海外から見るとかなり異様な光景でもありますが、「節水」という以外のメッセージが読み取れます。
アーティストイニシアティブ コマンドN
アーティストイニシアティブ コマンドNではデザイナーやアーティストとして活動しています。この「アーティストイニシアティブ」という考えは、ゼロダテや他のプロジャクトにも共通していえることですが、アーティストが自ら発表する場を作り、企画する。現在のアーティストにとって、ギャラリーや美術館ではなく、他の道を選択することはなかなか難しいことではありますが、それを実践しています。
最後に私にとって最大の影響力を持つ中村政人氏との関係について。同郷という共通点以前に、私が一番尊敬するアーティストです。今でもこのようにいえることを奇妙に思う人も多いかもしれません。しかしゼロダテやコマンドNを通して、自分のアイデンティティはやはり自分が生まれ育った秋田県大館市にあることは間違いないのです。
(2008年9月29日)
今後の予定
・2008年10月4日〜13日
「金沢アートプラットホーム2008」中村政人Z Project @金沢21世紀美術館
「第3の途」ゼロダテ代表として参加。
・2008年10月〜
アーティストイニシアティブ コマンドN 10周年企画 進行中
・2009年
アートプロジェクト ゼロダテ 東京展・大館展を毎年開催予定。
関連リンク
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・正札サイダー
大館大町商店街振興組合の企画でゼロダテがデザインした地サイダーの「正札サイダー」。倒産した地方百貨店「正札竹村」への記憶や思いが形になりました。
このような事例は、たぶん前代未聞だと思います。
・ゼロダテ Tシャツ
倒産した地方百貨店「正札竹村」の包装紙の柄をデザインしたTシャツです。 このカーネーションは秋田県大館市のほとんどの人が分かるアイコンであり ゼロダテの象徴となっています。
すべての商品のお問い合せはZAC(ゼロダテ アート センター)
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