「人生一発勝負」と「どもIV」
7月16日、一人芝居の愚安亭遊佐さんが、新潟中越沖地震の真っ最中、加茂市に帰りました。飛行機だけは飛んでいて2時間遅れで無事着いたようです。
♪ 生まれは生まれ、育ちは育ち・・恋模様てば、色模様・・人生模様てば、涙もよう・・秋の野山は、七色模様・・たそがれ時はあいまい模様!!・・過ぎてしまえばわがことであったようで、わがことでなし・・わたしに限りましては、人生は1回きり、それっきり、ただの一発勝負だと思っています。起きたことはおきたこと、出来事は出来事として自分の胸にしっかりとおさめて生きていかなきゃいけない。そういった意味におきまして、人生は予習も復習もない1回きりの一発勝負! ♪
(津軽三味線の音、高まる・・)
彼の代表作「人生一発勝負」を昼夜2日間、わが劇場・どもIVで公演した翌日でした。
愚安亭遊佐「人生一発勝負」 |
この芝居を初見したのは1980年の9月、当市の公民館でした。東京の生活を一切合切り捨てて全国行脚をする旅の一座がありました。大人6人・子供1人・犬1匹、ワゴン車1台に、鍋釜・寝袋を詰め込み、お代は見ての投げ銭興行。
劇団ほかい人群、主宰者は愚安亭遊佐、3本立ての演目のひとつに「人生一発勝負」がありました。上演時間40分でした(現在は2時間弱。平成11年度文化庁芸術祭優秀賞受賞)。
僕は地元の高校を、4年かかって卒業し(高校演劇をやりすぎて1年留年)東京の青年劇場に入ったのが19歳。新劇貧乏物語を目のあたりにして脱走。大学に入るも政治の季節で、ストとロックアウト・・。何だかんだといいながら、6年間東京にいるも、目標が定まらず、あえなく尻尾枯らして帰郷。働きながら地域劇団の代表と演出をやるも、なぜか中途半端な感じが常にあり、ウツウツとした時に遭遇。
高まるバチの音を聴きながら、「あー、仕事を辞めるな・・。こんな芝居作りたいなあ・・」。脳天を貫かれる思いで、涙を流していました。「人生1回きりだ、1回きりだ、、」と呟いていました。
翌年3月から4か月かけて、野幌駅裏にあったレンガ倉庫を手作りで改造して、「ドラマシアターども」を仲間と作りました。
劇団ほかい人群も旅興業を中断して、最後の2か月泊り込みで駆けつけてくれました1981年7月3日、朝まだき、愚安亭遊佐さんの揮毫を彫った大きな看板を、レンガの壁にはめ込み、ナットを打ち込む槌音を、誰かが「野幌の夜明けの音だ!」と叫びました。まだ皆20代後半から30代前半でした。
喰っていけるはずがない。まじめに働いて金を貯めてからやったら・・。札幌ならいざ知らず、田舎の野幌にお客さんがくるはずがない・・等など、周りから善意とも悪罵ともつかない意見に耳を貸さず、「・・いいんだ。3年やってつぶれたらそれだけの人生と納得するから・・」と自分にも言い聞かせ、周りにも吹いていました。
それから、作ってはこわして、また作ってはの4度の移転を重ねて昨年4月、終の本拠地であろう「どもIV」が全国のひとりひとりの支援で立ち上がりました。
初めて「人生一発勝負」を観た日から数えて27年・・。
今回の公演のカーテンコールの時に「母親がモデルであろう関根ミキが、いつの間にか演じる必要がなくなってミキなのか、愚安亭遊佐なのかわからなくなりました。ここまで来たら一生この芝居をやり続ける気がします。そして、常に私の芝居を呼んでくれた「ども」という劇場もまったく同じだと思います・・」(万雷のお客さんの拍手)
どもIVの土地の賃貸契約は、30年あります。あと28年、十分に納得して向こうに逝ける歳月です。
札幌駅から快速で25分、江別駅で降りて徒歩5分。
江別発祥の地、千歳川の側にある旧郵便局、レンガの建物。大正11年に成ったものです。ぶらっとのぞきに来ませんか。喫茶店と、ギャラリーもやっています。
建物で見るドラマシアターどもの歴史
どもI |
どもII |
どもIII |
どもIV |
(2007年7月17日)
今後の予定
■7/28(土)・29(日)
@ドラマシアターどもIV
「父と暮らせば」
井上ひさし作/ども演出(どもプロデュース)
■9/14(金)〜16(日)
@ドラマシアターどもIV
「鹿屋の四人」
鐘下辰男作/ども演出
■10/14(日)
@瀬棚町文化センター
「春遠からじ・・」
安念智康作/ども演出
■11/10(土)・11(日)
韓国春川(チュンション)市から
劇団DOMO「悪夢」江別公演
34歳のファン・ウンギ(春川国際演劇フェステバルプロデューサー)率いる、20〜30代の若い劇団。イギリスの作家ディケンス「クリスマスキャロル」を基に、夢をテーマに構成した舞台。江別に続き、福岡公演、11/21から八雲演劇祭に参加。
劇団DOMO「悪夢」江別公演
※演出のときは、ニックネームのどもを使ってます。
関連リンク
- ドラマシアターどもIV
北海道江別市二条2-7-1
TEL:011-384-4011
おすすめ!
- 『新劇・愉し哀し』(宇野重吉、理論社) 劇団民芸の創立者、宇野重吉さんのエッセイ集です。
日本の新劇の歴史、劇団という創造集団のありよう、駄目な役者といい役者の条件・・等など、実にわかりやすい文体で今でも十分に役に立つ本です。
「芝居をやった者は、やめても社長になれるだけの素質が養われている。集団をまとめること、宣伝チケット売りの方法・・それがなければ芝居を作れないのだから・・実践力が備わっているはずだ」と言い切っています。
まさにアートマネージメント論です。
次回執筆者
バトンタッチメッセージ
北海道演劇集団前理事長(今年4月までの8年間)
釧路演劇集団(創立40年くらい)の作・演出家
釧路の歴史を扱った「警鐘3部作」
昨年のアイヌ民族をテーマに「アイヌ逓送人吉良平治郎」の作演出(2008年東京公演予定)
オホーツク・道東の文化に造詣の深い好漢です。