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フィールドを変えて

めざせ! 富良野メセナ基金

 園山さんからの電話「この頃なにしとるん? C‐プランニング...なんだねそれは...じゃあ初仕事渡すね...成功を祈る!」で、リレーコラムをバトンタッチされた。

 10年前まで、富良野は自然環境のすばらしさは群を抜いているが、「文化的」とは感じられなかった。
 演劇関係者からも「道内で公演したくない3か所のひとつ」と聞いた。主催者にハートが感じられない、市民が楽しんでいない...等、要するに魂が感じられないと言う。誰のための文化事業なのか...。
 そこに富良野市は演劇専用劇場を建設すると言う。
 市民は大いに考えさせられた。

 そんな時、文化のソフトを重視した活動をしようと、ふらの演劇工房を設立した。3年の間にNPO法人取得、劇場(富良野演劇工場)受託、劇場のオープンと、思ってもいなかった大きなうねりを経験した。
 人件費の目途がなく、私はボランティアでNPOの事務局長と工場長(館長)を兼務し、理事長と工場長を兼務したりした。
 素人集団が劇場を運営するのであるから、想像を絶する無謀な挑戦であったことは間違いない。
 専門性を問われる立場でも、地域を何とかしたいという情熱と夢にうかされた、ただの素人である。「アートディレクター」「アートマネジメント」などのカタカナ言葉が飛び込んで来るが、正直わからない。
 このリレーコラムに登場している方々にも、ずいぶんご心配をいただきお世話になった。(この場をお借りして感謝!)
 今思うと得がたい経験をさせていただいたと思っている。

 「演劇文化の創造・発信基地」、「芸術文化の香るまち」を目標に掲げたふらの演劇工房は、市民に必要とされる劇場でありたいと、大きな課題に挑戦し、じっくり活動を始めた。小さなまちで周りの雑音を気にせず動くのは至難の業である。
 この10年間多彩な事業を提供してきた結果、文化的な街だと転勤者は喜び移住してくる人さえ出てきた。そんな外からの声や開館以来の黒字経営もあり、地元は大逆風から微風に、時には追い風に変わった。
 特に子どもたちへのプログラムの成果が評価され、活動が認知されてきたのだと思う。演劇工房は明確な目標を掲げ、課題を認識し、そして解決に向け一丸となって行動できたのが良かった(迷うと原点に戻る)。

 しかし、進歩の途中で新たな課題は必ず出てくる。観客の固定化、事業内容、課題の認識の違い、長期展望のずれなどが浮かび上がってきた。
 今のうちに、なんとかもう一皮むけた活動ができないものか...。組織の中にいるから見えないのでは...。内を知って外から見る人も必要では...。
 昨年、何人かの理事と共に役員を交替し、フィールドを変えることにした。正直大きな決断でもあった。どの組織も直面する第二壁なのかもしれない。
 演劇工房設立当初の市民の無気力、無関心、何でも反対から思うと大きな変化ではあるが...。

 地元でいままでとは違う仲間と話をする機会をじっくり持ち、改めて限られた人とだけ会ってきたと気づき反省する。
 演劇工房がどう見られていたか、事業内容に対する要望や不満、新たな活動をしたいがどうやってよいかわからない、支援の方法がわからないなど、聞こえてきた。市民には多くのニーズがあるが工房には届かないということである。
 「わかっているはず・・・」とか、いかに業界の言葉だけで伝えようとしていたのか。文化に理解ない人に伝えようとしているのだから、わかるように伝える必要がある。

 そこでこの4月、背中を押してくれる仲間がいて新しいフィールド「C-プランニング・フラノ」を作った。ふらの演劇工房の狭間を埋める役割とでもいいましょうか。
 Child(子供)・Creation(創造)・Culture(文化)・Chain(連なり)・Country(地域)・Communication(伝達・会話)の「C」である。
 これらを念頭に、さらに文化の裾野を広げてゆく小さな仕掛けをしようと思う。
 まちの中にたくさんの仕掛け人がいて、その仕掛けが劇場のさらなる活性化につながることを願っている。

 今、富良野は「まちをどうしたいのか」のテーマのもと、いくつもの市民グループが真剣に活発に動き出し、変化への胎動を感じている。100%市民が出資しあって作ったFMラジオ局も大活躍している。

 ここで各文化的な活動、事業のコーディネーターとして、改めて文化ホールに専門職としアートマネージャーが必要であると感じる。(いればよいというものではないが)美術館の学芸員、図書館の司書のように...文化ホールにアートマネージャーの配置を義務づける...切に望みたいものである。

 フィールドを変えたとたん、全国展開している地元のお菓子店から文化事業に資金援助の申し出があった。小さな任意団体で動き出した時のネックは、やはり資金面。
 願っていた「メセナ」がついに富良野で実現した。非常に大きな一歩である思っている。早速、他のグループと連携をとり今年度の事業を企画中である。
 この一企業のメセナが呼び水になり、いずれは「富良野メセナ基金」が誕生することを夢みている...。
 新たな活動を始めてすぐに新しい出逢いにつながったことを喜び、かつ正直驚いている。今までの活動や子どもたちへのプログラムが評価されたのかと思い、うれしい気持ちでいっぱいである。

 倉本聰氏が富良野で「文化の種」を蒔き始め、市民が応援してきた。これからいろいろな方法でそれを育て成長させてゆく時期ではないかと思う。たくましい多くの種類の多様な文化が育ってほしい。目標を明確にし、課題を認識しつつ、富良野が大好きな仲間たちと、もう少しの間楽しく続けようと思う。

(2007年5月13日)

今後の予定

■ 6/10
神田山陽独演会

■ 6/15〜7/16
富良野グループ「ニングル」ロングラン公演

■ 7/25
楠美津香 ひとりシェークスピア「オセロ」公演

■ 8/26
こまつ座「円生と志ん生」公演

■ 10月頃
「秋山仁 数学はこんない面白い」講演 学校他

■ 11/11
「富良野・森の朗読10分間劇場」

関連リンク

おすすめ!

おすすめはやはり「富良野」です。
観光雑誌に出ている情報とは一味違う「富良野」を味わっていただくために来てくだ さい。
「おもしろい文化人」がたくさんいます。
陶芸、絵画、書家、写真家、演劇人、工芸家、音楽家、こだわりシェフ、こだわり農 夫…などなど。
ゆっくり彼らとお話をしているだけで心が豊かになりますよ。
ちなみに6月23・24日は「ふらのクリエイターズマーケット」を開催します。全国か らクリエイターが集まって技を見せてくれます。

次回執筆者

バトンタッチメッセージ

札幌の琴似地域でゆったり、じっくり、しっかり文化を育み楽しんでいる飯塚さん。
ある会議の後お蕎麦屋さんで、私のフィールドを変える背中を押していただいた一人です。
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