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新年1月「月の舞台」がオープン

〜TAM開催が契機となり〜
12-01.jpg 「月の舞台」の内部

12-02.jpg 「月の舞台」の周辺


 上の2葉の写真は「月の舞台」と名づけられた小劇場のステージと、そこから望む岡山市街を流れる旭川河畔の景観です。この舞台は今年11月27日に竣工したばかりで、東壁一面の窓からは両岸に築かれた日本三大名園のひとつ後楽園や岡山城が展望できるという、市内でも羨望!?の地にあります。
 再び、舞台の写真をご覧ください。これは施主の旧家に代々受け継がれてきた能舞台を新築ビルの最上階に移築したもので、奥行6m×間口5mの舞台と60名程が座れる客間の周囲に回廊を巡らし、借景には川面や月光が映えるという設計になっています。施工にあたっては、国重文の寺社も多く手がけている練達の宮大工や、彫刻からデザインまで多才な活躍を続ける現代美術家らが、建物内部の細かなディテールにいたるまでかかわった造りとなっており、風流とか雅趣という形容を超えて、端正な緊張感で訪れる人の感性を刺激するにちがいありません。
 もうひとつ、この施設の特色として、5階に「月の舞台」があり、4階までのフロアにはデイサービス施設や介護付き有料老人ホームが入居しているところです。つまり、芸術文化と医療福祉を融合させて、アートと地域社会の新しい出会いを創り出すとともに、独自のコンテクストでメセナ支援活動にも着手するというのが、施設建設の重要なコンセプトになっているのです。

 私は施主である水川家と15年前にアートファームを創設した頃からのつながりがあり、微力ながら「月の舞台」のプログラム・ディレクターとしてお手伝いをしています。年明けの2006年1月15日から約1か月にわたり柿落とし公演を計画しており、大蔵流狂言の善竹十郎さん、ソリストの近藤浩子さん・目黒未由佳さん・井野邊大輔さん、コンテンポラリーダンスの北村成美さん、演劇のチェリフィッチュの皆さんらに登場していただく予定です。
今から7年前、「劇場をつくろう∞演劇をはじめよう」というテーマでTAM(トヨタ・アートマネジメント講座)の岡山セッションが開催された頃に構想された「月の舞台」。以来、水川家の地道で志の高い努力が実を結び、岡山に新しい芸術文化の拠点を誕生させようとしています。

 この間、私とアートファームにもさまざまなことがありました。岡山市の犬島アーツフェスティバルや倉敷市の演劇フェスティバルをプロデュースしたり、アートファームの舞台芸術活動をNPO法人化したり、さらに、私自身は今年4月からJR高松駅前に昨年オープンした高松市文化芸術ホール(愛称:サンポートホール高松)のプロデューサーとして、瀬戸内海を往復する日々が続いています。

 「月の舞台」は、ロビー入口から舞台へと向かう動線を、子宮から胎内へと導かれるようなイメージの空間デザインに設えており、この小空間が歳月を経ていくなかで水準の高い芸術文化を育むインキュベーターとして役立ってくれることを期待しています。

●「月の舞台」 開場記念公演シリーズ <不易と先駆>
出演者紹介

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善竹十郎
1944年生。故善竹圭五郎の長男。父および祖父故善竹彌五郎(人間国宝)、大蔵流24世宗家・故大蔵彌右衛門(伯父)に師事。重要無形文化財総合指定保持者。(社)能楽協会・日本能楽会会員。83年芸術選奨文部大臣新人賞・93年大阪文化祭賞受賞。早稲田大学エクステンションセンター、桐朋学園芸術短大、帝京平成大学講師。

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北村 成美
通称なにわのコリオグラファー・しげやん。生きる喜びと痛みを謳歌するたくましいダンスをモットーに国内外を股にかけ、バカおどり道を疾走中!! 岡山舞台芸術ゼミナールの講師、「お家でダンス」をスパイラルビルの旧家で実施。2002年第1回TORII AWARDフランス賞・オーディエンス賞、03年大阪舞台芸術新人賞受賞。

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チェルフィッチュ(写真は「クーラー」)
劇作家・演出家の岡田利規のソロユニットとして1997年に結成。同年『峡谷』(横浜相鉄本多劇場)で旗揚げ。以後、横浜STスポットを拠点に活動。チェルフィッチュ(chelfitsch)とは、自分本位という意味の英単語セルフィッシュ(selfish)が、明晰に発語されぬまま幼児語化した造語であり、現代の日本、特に東京の社会と文化の特性を現したユニット名。01年3月発表『彼等の希望に瞠れ』を契機に、現在の作品に見られるような超リアル日本語を使う作風に変化。だらだらとしてノイジーな身体性を持つようになる。現代の日常的所作を誇張しているような/していないような独特の身体的方法は時にダンス的とも評価される。04年『三月の5日間』で岡田利規が第49回岸田戯曲賞を受賞したほか、主な作品として『マリファナの害について』(03年)『ポスト*労苦の終わり』(05年)、ダンス作品『クーラー』(04年)などがある。

(2005年11月27日)

今後の予定

「月の舞台」 開場記念公演シリーズ
<不易と先駆>
2006年1月15日(日) 〜 2月12日(日)

●大蔵流狂言
「末広がり」
出演:善竹十郎、善竹富太郎、善竹大二郎、田賀屋夙生
日時:2006年1月15日(日) 開演14:00(開場13:30)
料金:4,500円(前売・当日共通)
席数:60名程度

●北村成美
コンテンポラリーダンス 『HR★Y (ハードロックウィズユー) 』
出演:北村成美
日時:2006年1月22日(日) 開演14:00(開場13:30)
料金:3,000円(前売・当日共通)
席数:60名程度

●弦楽三重奏
シューベルト 『トリオ B-dur D471』
ヘンデル(ハルヴォルセン) 『パッサカリア』
ドホナーニ 『セレナーデ op.10』
出演:近藤浩子、目黒未由佳、井野邊大輔
日時:2006年1月29日(日) 開演14:00(開場13:30)
料金:4,000円(前売・当日共通)
席数:60名程度

●チェルフィッチュ
作品・出演:
『クーラー』 山懸太一、山崎ルキノ
『マリファナの害について』 松村翔子
『ティッシュ』 松村翔子、端田新菜
演出:岡田利規
制作:中村茜
日時:2006年2月11日(土・祝) 開演18:30(開場18:00)/12日(日) 開演14:00(開場13:30)
※各終演後に岡田利規によるトークショーあり
料金:前売3,000円 当日3,300円
席数:各公演60名程度

関連リンク

次回執筆者

バトンタッチメッセージ

藤田直義さま
鳥取の五島朋子さんから手渡されましたバトンを、岡山と高松を橋渡しして、高知の藤田さんへお届けします。いつもどっさりお送りいただく宣材を拝見しながら、一環した事業のクオリティーを心より敬服いたしております。今年の4月から私は月の3分の2を高松で過ごしています。これからのますますのお近づきのしるしに、このバトンをお渡しします。
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