〈私の森〉
子どもの頃、すごい男の子をテレビで見かけました。
一見普通の男の子なのですが、ある呪文を唱えるとおでこに乗せていたメガネがストンと落ち、そのメガネをかけるとあら不思議、それまでただの物だった冷蔵庫や信号機、ポストたちと話ができるようになるのです!
テレビのなかで冷蔵庫や信号機、ポストたちは物としての自分の思い、人間への不満を口にしました。
その男の子は物の気持ちを理解し、解決に努めるのです。
子どもの自分は思いました。
「何てうらやましいんだろう!」
私が話せる者と言えば人間だけで、更に日本人に限られている。
それに比べて彼は物と会話ができて、彼らの気持ちを理解できる。物と友だちになれるなんて、世界が広すぎる!
話せる要素はなんだ? 呪文か? メガネか? どっちもか?
私はすぐにチャレンジしました。
じいちゃんの老眼鏡を頭に乗せ、不思議な少年が言う通りの呪文を唱えます。
「おでこのメガネでデコデコデコリ~ン!」
メガネはうまい具合にストンと落ち、私の目に掛かりました。
...うわ~! すごい! 世界が歪んで見える!
さっそく物が何か尋ねてくれるかと待ちましたが効果なし。
私も話しかけてみましたが応答なし。
じいちゃんのメガネが良くないのか、自分にはその力がないのか、
私はガッカリしつつも羨望の眼差しでテレビの少年を見つめていました。
こんな感じで私はそれ以降も、物または人間以外の生き物と友だちになれないものか、どうにか自分だけの友だちはつくれないものかと模索していました。
友だちとして重要なのは、孤独であることでした。
それは寂しく悲観的な孤独ではなく、単独であること。
あるときは毛虫こそ私の友だちではないかと思いました。
一時私は毛虫は小さな哺乳類だと思っていたので、この小さな動物は皆からは嫌われているけれど、私は嫌ったりしないよ味方だよ、と話しかけ腕に乗せては愛でていました。そんな私もある日毛虫が虫であることを知らされ、衝撃と同時に毛虫を触れなくなるのですが...。
そのうちに私は自分のなかに森をつくり始めました。
自分でつくった森の割になかなかいい具合に迷い込める森で、
私はその広大な森に住人をつくり、住まわせることにしました。
彼らは人間の身体をしているのですが、顔は違います。
頭が電球だったり時計だったり急須だったり。
物でない者もいます。
魚だったり象だったりおっぱいだったり。
彼らは皆単独で、連むことがなく、それぞれにふてぶてしく健気に生きています。
あるとき衝撃的に面白い人形劇を観て、
(糸あやつり人形劇団みのむし『ニューそぼく谷ヘルスセンター』)
その小さな世界で動くふてぶてしく健気な生き物に興奮しました。
お話がエッチだったこともあり、なおのこと興奮しました。
そして、ああそういえば子どもの頃憧れていたあの少年は人形だったなあと思いました。
私は今も物とは会話ができないし、毛虫も触れないままですが、
物が動く人形劇に心動かされ、今は人形劇をしています。
私の森の住人たちは時々人形劇に登場するのですが、
森の外の居心地を確かめては、悪くないねって顔をしています。
私もそうだねって思います。
(2014年9月24日)
今後の予定
11月29・30日京都市<あとりえミノムシ>
夕亜『旅りんご』上演予定
夕沈(少年王者舘)とのユニット
2015年1月24日名古屋市<シアターカフェ>
JIJO☆SUKIMAKIanimation『マリオメーション』他を上演予定
アニメーションと人形劇
2015年秋、海外での路上パフォーマンスをしたい!
関連リンク
おすすめ!
札幌市西区「宮の沢駅」近くに、『じぃじょ』という居酒屋があります。
私の劇団と同じ名前でオススメです。