アートマネジメントのインターン現場レポート
~世田谷パブリックシアター 2024(3)
今夏、夏休み期間中に世田谷パブリックシアターでインターンをする学生から寄せられるレポートをご紹介しています。第3回は長期・音楽劇、制作コースの2名のレポートです。
※インターンの詳細はこちらから
Bコース [長期]音楽劇『空中ブランコのりのキキ』制作コース
芸術文化観光専門職大学 芸術文化観光学部 芸術文化専攻4年
可知瑞季さん
長期間作品創作に携わることで、制作における細部への気配りやこだわり、公共劇場とアーティストの協働に対する理解の深化という2つの側面から多くの学びを得ました。
まず、演劇制作における細部へのこだわりについてです。稽古場の見学や取材部屋の設営を通じて、関係者一人ひとりのルーティンやアイデンティティを把握することの重要性を学びました。たとえば、稽古場での椅子の配置は、出演者の行動や自主練習の傾向を観察することで、それぞれのニーズに応じた空間づくりが行われていました。
また、情報共有も重要な要素です。稽古動画の共有を通じて、制作と演出助手の業務がシームレスであるため、必要な情報を的確に把握し発信することが求められました。形式的な進行だけでなく、出演者やスタッフに合わせたオーダーメイドの心配りを学び、実践することができました。さらに、プロデューサーの大下氏のレクチャーを通じて、劇場がアーティストと協働し、作品を観客に届ける方法を学びました。特に、キャスティングやスタッフの決定権を劇場が持つ理由や、その仕組みが作品の公平な評価やアーティストの成長につながることを理解できたことは、私の視野を広げる大きな成長となりました。
世田谷パブリックシアターならではの哲学や演劇制作のこだわりを学び、これを今後の制作業務や地域の舞台芸術の発展に活かしていきたいと考えています。
専修大学商学部マーケティング学科2年
半田さくらさん
演劇をつくりあげる現場にはどのような仕事があるのかを知りたいと思い、インターンシップに応募しました。
公演にかかわる経験がなかったため、初めてのことばかりの環境の中、非常に多くのことを学びました。
中でも大きな学びは、舞台制作者の役割と心構えです。制作者は、公演にまつわるすべてを円滑に進行させる、という重要な役割を担います。その一方で、現場の状況を広く察知し、多方向への細やかな心配りを欠かさず、常に現状に満足しない姿勢が求められることを、制作の皆さんの背中を見て学びました。
その学びを自らの行動に変えようと、ロビーに設置したアンケート記入ブースの日々の改良に努めました。毎回の状況を踏まえてインターン同士でアイデアを出し合い、装飾や配置を工夫することで、ブースには回を追うごとに多くの人が集まるようになりました。
以上のほかにも、SNSの更新、書類の作成やケータリングの補充、緊急時の対応など、さまざまな業務を通じて新たな学びや発見がありました。そのすべてが、舞台制作の仕事への理解を深める貴重な経験となりました。制作の皆さん、そして現場の皆さんに教えていただいたたくさんのことを、今後の糧にします。
世田谷パブリックシアター担当者コメント
大下玲美
世田谷パブリックシアターのインターンシップは長い歴史があり、さまざまな学生たちが参加し、羽ばたいていきました。近年の書類~面接での選考の過程で、時代の変遷とともに、ライブエンターテイメントや舞台芸術に偏見なく興味を持つ学生が増えてきたように感じています。また、インターンシップの普及により参加者は臆せず、楽しむ力を持ちあわせているようです。とはいえ、幅広いエンターテイメント・芸術分野において、その中でも特に舞台芸術に対して強い気持ちをもつ学生はまだまだ多くありません。いかにして舞台芸術界の未来を担う人材を創出していくべきか、何を提供していく必要があるのか、まだまだ考えさせられることも多くあり、インターンシップで参加者と出会うことは、わたしたちにとっても多くの学びとなっています。
昨年から再開したクリエイション現場での長期のコースにおいて、Bコースの参加者の可知さん・半田さんは、平素から小劇場から商業演劇まで触れておられ、現場でも、とても前向きに楽しんで取り組んでくれました。お二人からは舞台芸術への強い気持ちを感じたのも印象的でした。最初は戸惑っていた二人が、やがて自覚的に創意工夫をしていき、成長していく姿はとても頼もしかったです。
今年のインターンシップの参加者たちが、この機会を糧に、舞台芸術にかかわる分野で活躍する人材となってくれることを祈っています。
参加してくださった皆さん、ありがとうございました。