アートマネジメントのインターン現場レポート
世田谷パブリックシアター 2023(2)
先日よりスタートした、2023年度 世田谷パブリックシアター夏休みインターンの現場レポート。
ネットTAMでは、参加者が学んだことや得られた気づきなどの所感と、受け入れ側の世田谷パブリックシアターのインターン担当者のレポートを合わせて、ご紹介しています。
今回はBコース:ミュージカルコースのレポートです。
(Aコース:落語とダンスコースのレポートはこちら)
Bコース(長期) ミュージカルコース
青山学院大学 文学部比較芸術学科 宇津城風夏さん
公演期間で印象に残っているのは、〈感想ボード〉に関して、最善のかたちを模索し続けたことです。ミュージカル「カラフル」では、“せたがやこどもプロジェクト”として、より子どもたちに楽しんでもらえるよう、劇場ロビーに〈感想ボード〉を設置しました。ボードは予想を上回るスピードで埋まり、連日大盛況のエリアとなりました。増設が必要だったほどで、配置を調整しながら、清潔感と手づくり感の塩梅を探るのが難しかったです。
作業を通して、インターン2名が互いの強みを活かす役割分担ができるようになり、効率よく動けるようになりました。現場で求められる主体性や、先を見据える力も鍛えることができたと思います。作品をつくるだけでなく、お客様に届けるまでが舞台制作業務であるとわかり、毎日増えていく感想からもこの仕事のすばらしさを実感することができました。
完成はなく、常に最善を目指す。今回の活動を通して、劇場が見えないところで尽力する人々の情熱によって動いていることを知りました。自分もその一員になれるよう、この経験を糧にしたいです。
青山学院大学 総合文化政策学部3年 田島南さん
稽古期間を通じ、制作の仕事は、現場のすべての人やものに目を配る必要があると実感しました。制作担当者は、細かな作業から作品全体を大きく動かす仕事まで担いつつ、キャストやスタッフに笑顔で穏やかに接する姿から、作品にかかわる方々のクッションのような役割だと感じました。
レクチャーでは、公共劇場としてつくる作品と民営劇場のそれはまったく違うという点や、芸術監督に白井晃さんを擁するこの劇場で何を創造発信するかが最も重要だという点が特に印象に残っています。また、自身の企画をプレゼンする機会もいただき、貴重な経験となりました。
世田谷パブリックシアターでは視覚障害者のための舞台説明会を実施していますが、舞台「ある馬の物語」の開演前の説明会では、舞台上にガイドが立ち、公演の内容・舞台美術・俳優の立ち位置などを鑑賞者の空間把握の補助となるように解説していました。公共劇場が、より多くの人にとって開かれた場として重要な役割を果たしていることを学びました。
今回、公共劇場の役割や舞台制作の仕事についての理解が深まり、制作アシスタントを通して自ら課題を発見して取り組む力が鍛えられ、何物にも代えがたい充実した経験ができました。
世田谷パブリックシアター担当者コメント 本橋歩
世田谷パブリックシアターの主催公演では初めてのミュージカル作品の創作(株式会社アミューズとの共催)、そして本インターン企画では初めての長期コースと、初めて尽くしの現場に入っていただきました。その中でお二人はとても積極的に、そしてポジティブにインターンに参加する姿がとても印象的でした。
今回、長期間のインターンだからこそできる課題をと考え、公演のロビーで掲出した感想ボードの作成・運用と公演関連ワークショップのチラシのデザインを提案しました。お二人とも積極的に案を出し合い、デザインを考え、必要な資材を検討・提案するなど、計画的に協力して進めていただきました。実際に感想ボードの運用を始めてからも、よりよいかたちを目指してお二人で意見を出し合い、日々細かいアップデートを積み重ねていく姿が印象的でした。そのおかげで連日終演後は感想ボードの前にたくさんのお客様が熱心に感想を記入し、当初用意していた感想ボードの3倍ほどの感想が集まりました。
お二人のさまざまな業務や課題を積極的に楽しみ、失敗も前向きにとらえる姿勢があったからこそ、「自ら課題を発見し取り組むこと」「常に最善を目指すこと」という学びを得ていただくことができたのだと思います。今回の経験を活かして舞台芸術分野でまた一緒に働く日を楽しみにしています。