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ネットTAMブログ特別企画
「トヨタ・エイブルアート・フォーラム その後の10年」
~エイブルアートの歩みと未来~(4)

【トヨタ・エイブルアート・フォーラム その後の10年】(4)
<静岡県浜松市>
NPO法人クリエイティブサポートレッツは、現在、たけし文化センター事業を行っている。これは、重度の知的障害のある人の、やりたいことに向ける熱意、姿勢を称え、それを軸として、真の公共を考えていく事業だ。レッツでは、障害福祉施設アルス・ノヴァを運営しているが、これもたけし文化センター事業をベースにつくられた。障害のある子どもたちや人たちの、障害ゆえの癖やこだわりを、問題行動として捉えるのではなく、その人の個性、あるいは、熱心に取り組んでいること、その人にしかできないこととして組立て、そこに新たな意味や価値観を構築していくことを行っている。
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2000年設立当初のレッツの様子。
「日ごろ出来ないことをおもいっきりやろう」を合言葉に、
様々な事業を実施。活動場所である建物にペイントする。
レッツの活動を始めたきっかけは、2000年のトヨタ・エイブルアート・フォーラム横浜であった。重い障害を持って生まれた息子の誕生は、母親である私の人生を変えた。それでも、家族が、そして本人が、幸せに生きることを模索していた時に、フォーラムと出会った。障害があろうがなかろうが、人は表現を通して認められ、他者とつながっていくというメッセージは、まさに、衝撃的であった。そして、障害のある人のイメージをまったく変えていくことができると確信した。
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2002年、トヨタエイブルアート浜松の様子。
フォーラム会場で展示も行った。1日で300人近くの方々が入場。
フォーラムも大いに盛り上がった。
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フォーラムから生まれた、片岡祐介氏による音楽ワークショップ。
障害、子ども、大人といった境界を超えて、音を探る試み。
同年にレッツが誕生し、2002年に浜松でもフォーラムを行った。このフォーラムによって、レッツの活動は、障害を含めた様々な人々がインクルージョンしていく社会の実現と、オルタナティブな場を作っていくことに焦点が定まったように思う。そして、その後のエイブル・アート・ジャパンとの交流と、特に、播磨靖夫氏の思想に多くの示唆をいただいてきたと感謝している。
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2008~2009年、たけし文化センターを実験的にオープン。
多様な人たちが混在し、自分のやりたいことを行うオルタナティブスペースを実現。
このコンセプトは、現在も、レッツで様々な事業を生んでいる。
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たけし文化センター看板・ロゴマークとたけしくん
たけし文化センターのコンセプトである、個人を認め、個人の自己実現や表現をサポートするとは、さまざまな状況の個人の幸福を追求することである。これはまさしく福祉である。同時に、個人の幸福の追求において、既成の概念や、価値観を変えていく、見方を変えていくことが必要となる。これはアートと同義である。福祉もアートも、人間(個人)の尊厳と幸福を回復していくうえで、大きく貢献ができる。
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2011年からスタートした、浜松市中心市街地にある、たけし文化センターINFOLOUNGE。
やりたいことを実現できるスペース。多様な人たちが、ふらりと訪れる。
エイブルアート・ムーブメントの特出すべき点は、福祉とアートを組み合わせる(混在させる)ことによって、両者の存在意義に一石を投じたことである。そして、人類とともにある福祉、障害のある人たちが、個人として、さまざまな可能性を開き、他者とつながっていく事実は、障害に関係なく誰にでも与えられた権利であり、自由であるということを、社会に知らしめた。
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2010年から行っている障害福祉施設アルス・ノヴァ。
街道に面した、3階建の建物に、月曜日から土曜日まで、
障害のある人と、子どもが、毎日30人以上が通ってくる。
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アルス・ノヴァの日常1
障害のある利用者さんのやりたいこと(欲望!)を実現していった結果、こうなった。
Oくんは、電化製品にこだわりがある。そして子どもが大好き。
近くの小学校まで、好きなものを満載して、散歩に出かける。
その日に積みたいものを、真剣に、組み立てていく。
好きなことを、やりたいことを、全力で支援する。
それがアルス・ノヴァのモットー。
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アルス・ノヴァの日常2
Mくんは、人と交わるのが苦手。いつも誰もいない隅っこで、黙々と色塗りを行っている。
子供の好きなOくん。ひょんなことからMくんの色塗りが顔塗に変わっていく。
こうして、シャイな2人の共同作業が始まった。
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アルス・ノヴァの日常3
Rくんは、普通の人なら5秒で降りることができる階段を、20分も、30分もかけて降りてくる。
でもスタッフか決して「早く」とは言わない。
むしろ、彼のこの時間の流れの中に、何があるかに興味津々。
言葉を持たないRくん。だからこそ、私たちの想像力は鍛えられる。
今、Rくんと時間を共にする、ワークショップが行われるようになった。
トヨタ・エイブルアート・フォーラムは、地域の、ちいさな一市民を勇気づけ、それぞれの活動へと導いていった。昨今、日本において、多様なアートプロジェクトが展開されているが、その中でも、福祉の新たな可能性を開き、同時に、アートの意義を深めた先駆的な事業であった。
そして、さまざまな問題を抱えている現代の中で、こうしたプロジェクトの意義はますます大きくなると感じている。
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2014年2月16日浜松市の鴨江別館にて、「レディオ体操発表会」を行います。
障害のある人の表現集団結成のための実験を行っています。
彼らが生んだ新しいラジオ体操とは?!
(2014年1月5日)
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NPO法人クリエイティブサポートレッツ
理事長 久保田 翠
1962年生まれ。静岡県浜松市在住
武蔵野美術大学造形学部建築学科卒業後、1988年東京芸術大学美術学部大学院環境デザイン科修了。有限会社アムズ設立(~1993)。長女出産を機に、高木滋生建築設計事務所にて、環境デザイン担当。当事務所浜松事務所代表(~1998)。静岡大学農学部非常勤講師(建築設計、~2010)
2000年に、長男の出産を機に、NPO法人クリエイティブサポートレッツ設立。2004年NPO法人化。2008年たけし文化センター事業スタート。2010年障害福祉施設アルス・ノヴァ開所。2011年たけし文化センターINFOLOUNGE。
NPO法人クリエイティブサポートレッツ http://cslets.net/
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