魅力いっぱい「神山アーティスト・イン・レジデンス(KAIR)」(徳島)に行ってきました!
四国徳島の神山町で12年前から運営されてきた「神山アーティスト・イン・レジデンス」。
2009年度の「国際交流基金地球市民賞」を受賞したり、アサヒ・アート・フェスティバル2010に参加していたり、今夏は横浜で交流展覧会を開いていたり。ネットTAMリンク集にも掲載しているし、いろいろ見聞きしてはいつか行きたいなあと思っていたところ、今回縁あって念願がかない、ついに神山町に行ってきました。
現地に到着したのはすっかり夜もふけてから。地元の方に「明日の朝、景色にびっくりするよ」と言われていたのですが、まさにその通り!翌朝カーテンをあけると、目の前には豊かな緑の山が広がり、ひんやりと澄みきった空気のなか、清らかな川が流れていました。
NPO法人グリーンバレーが運営主体となって展開している「神山アーティスト・イン・レジデンス」の活動について、 「地球市民賞」サイトでは以下のように紹介しています。
過疎化地域が生き残るための解決策を見出そうと、アートを柱に世界と地域をつなぎ、グローバルな地域活性化を図る。海外からアーティストを招く神山アーティスト・イン・レジデンス(KAIR)事業から、中・長期滞在するアーティストへの支援事業、アートの森整備事業、劇場寄井座(よりいざ)の再生など多彩な活動を展開。また、 過疎化を前向きにとらえ、「創造的過疎」をうたい、将来の人口減を見据え、地域が求める人材を移住者として受け入れている。良いと思ったアイディアはすぐ取り入れて、実行に移す、"Just do it!"がモットー。できない理由よりできる方法を考えて実践に移すなど、フットワーク軽く国際文化交流活動を行なっている。
この「創造的過疎」という言葉。掲げられているだけではなく、実践から生まれてきたことを実感しました。皆さんが、なんとも明るく楽しくあたたかく活動されているのです。
各地に多数存在する「アーティスト・イン・レジデンス」プログラムですが、神山は、地元住民の皆さんが主体となって手づくりで運営しています。第1回目の滞在アーティストのことも皆さん鮮明に記憶しているほど、制作プロセスを一緒に楽しみ、地域での交流を深めてきた様子が随所から伝わってきます。
「制作期間を通じた住民とアーティストの交流の質には自信がある」、というのも納得!
毎年発行される、写真が満載の報告書は、「神山からアーティストへのプレゼント」という気持ちで丁寧に制作しているそうです。このリーフレット、愛情がたっぷりあふれていて心動かされます。
「お父さん、お母さん制度」というのもユニークです。
アーティストの要望にきめ細かく迅速に対応するため、アーティスト一人ひとりにお父さん役・お母さん役がつくという仕組み。お父さんお母さんは、制作から生活まで全面的にサポートしているとのこと。
作品が点在する森を歩いた第一印象は、「明るい!」。よく手入れされていて気持ちがいいのです。
山の手入れも活動の一つとのことですが、その背景にはエピソードがありました。
「アーティスト・イン・レジデンス(AIR)」を始めたごく初期の頃のこと。
アーティストが山に分け入って作品を作ってしまった。事務局は山の持ち主に謝りに行き許しを得た。しかしまた山の中に作品を制作するアーティストがあり、山の持ち主にまた謝って、許しを得ることに。この繰り返しだったので、それならいっそと、「山中でのアーティストの作品制作に対し許可を与えていただくかわりに、事務局は山の環境保全に努める」との覚書を結んだそうです。
それからは、AIRの活動は作品制作だけでなく、自然な形で環境活動にも広がっていったそうです。
今では参加費を払って森の保全活動にボランティア参加する方々も多いそうです。「アートから入る環境活動は、肩肘張らずにできますよね」との言葉にも、神山流を感じました。
ところで、神山でのアーティスト・イン・レジデンスの歴史は、なんと江戸時代にさかのぼるとか。
江戸後期から明治・大正時代にかけて、外から招かれた絵師たちが神山の庄屋さんや富豪の家に滞在して、人形浄瑠璃の背景などに使う「襖絵」を多数描いていたそうです(1459枚も現存)。
まさに、アーティスト・イン・レジデンス!
また、神山には昭和4(1929)年に創建された民間劇場「寄井座」という貴重な文化資源もあります。いつしか使われなくなり老朽化が進んでいましたが3年前に復活。さらなる活用をめざしているとのことです。寄井座の天上には、創建当時の広告協賛看板がまだ残っています。レトロでいて新鮮!
こうしたエピソードの数々は、山下里加先生率いる京都造形芸術大学「カミツレ(私を神山に連れてって)」運営チームが作成した「神山の地図」というすばらしいリーフレットでも、読むことができます。
神山は、移住希望者の積極的な受入れも行っているそうですが、レジデンスはじめ、住みたくなるようなポイントがたくさん。本格的石釜焼きのパン屋さん「薪パン」や、銀座のミシュラン3星店で修行を積んだ若大将が腕を振るう「松葉庵」など、おいしいスポットがたくさんありました。もちろん温泉も人気。
「創造的過疎」をめざす神山。一度行くと不思議とはまる人が多いという、魅力ある地域です。
ぜひ機会を見つけて訪ねてみてください。
なお、11/20(土)21(日)に開催される「アサヒ・アート・フェスティバル2010報告会」で、神山アーティスト・イン・レジデンスが活動報告するそうです。ご関心のある方は、まずはここからいかがでしょうか?