文化庁文化政策部会の報告書(アートマネジメント関連)→アートマネジメントの就労環境可視化の要を思う
本ブログでは、文化庁文化審議会文化政策部会(第5-6期)の「アートマネジメント人材等の育成及び活用について」の審議について何度か報告してきました(07/10/19、08/1/19、08/2/20、08/3/12、09/4/9、09/4/10)が、このたび、文化庁より一連の審議のまとめが発表されました。
アートマネジメントについて、国の最新の見解がまとめられているものということになりますが、皆さまの感想をぜひうかがいたいです。
まだ細部まで丁寧に見ていませんが、感じたことをいくつか...
・国が「アートマネジメント」について、時間をかけて審議していることは、この分野に携わるものとしてありがたい。
・それが政策評価の対象となり、今年具体的に事業化された(予算がついた)ことはすばらしい!
その上で、ちょっと物足りなさを感じる部分は...
・政策が手薄だった分野ということで「実演芸術」に特化して検討が重ねられてきたが、アートマネジメントを議論するならやはり全ジャンル扱う必要はなかったのか?(たとえば、TAM的「アートマネジメント」では美術分野もとても活発。この方々の意見はどこにぶつけたらよいのだろう...)
・たしか文化庁は10年ほど前にも、同様に「アートマネジメント」をテーマにいろいろとおこなっていた。その時の議論は今回にどのように生かされたのか否か。その時と今回とでは何が異なるか(日本のアートマネジメント環境の変化を受けての議論なのだろうか?)
・雇用の問題、アートマネジメントを生業としていかに成立させるかの議論がすっぽり抜けていないか?
・議論の根拠としているアンケート調査のサンプル数が少ないのでは?(%表記で目立たないが、実数にすると国の現状を反映している数字とは言いにくい)。大小さまざまなNPO、公益法人、芸術団体等、あらゆるバックグラウンドの関係者の現状を把握してほしい。
特に、「アートマネジメントをいかに生業として成立させるか」は、現場の当事者たちにとって最大かつ待ったなしの課題だ。大学教育のことももちろん大事。でも、いち早く国として課題を可視化してほしいのは、就労環境の方でなないだろうか。ここをクリアしない限り、アートマネジメントの課題は少しも解決しないように思う・・・。
一昨年文化政策部会でアートマネジメントについて発表する機会をいただいたので、思い切って「R25問題」「R35問題」という切り口から(急な坂スタジオ「マンスリーアートカフェ」vol.4が取り上げた話を発展)、アートマネジメント分野の就労環境について、文化庁や委員の方々に話してみた。
この分野では、25歳と35歳あたりに分岐点のようなものがある気がする。アートが好きでやる気にあふれ、安い給金でも張り切ってプロジェクトを動かしてきた人材が、過酷な労働環境に突如バーンアウトしてしまう...25歳ぐらい。
R25問題を乗り越え責任あるポジションにもつき仕事に充実感を覚えて日々やってきたが、人生の節目--結婚や出産、子どもの教育を考えた時に、あるいは親の介護等に直面して、どうしてもこのままの条件ではやっていけないと離職する...35歳ぐらい。雇用する側も、「暮らしていけないのでは」と、家族もちの30過ぎの男性を雇用することを躊躇してしまうことも、実際ある。この業界に女性が多いことと無関係ではないだろう。
せっかく育てた人材が、いなくなってしまう。この分野でこれまで人材育成に投資した諸経費の総量を考えると、ものすごい無駄使いになっていることになる。
こんな現場の事情を、困っている当事者の一人として言わなきゃ!と、意を決して説明してみたが・・・・・うーん、私の説明下手もあり、「R25って何ですか?」とそこに突っ込みが入ってしまい、うまく伝わらなかった。。。。残念。。。(同じく発表者だった鳥取県文化振興財団の柴田さんのみが反応してくださった)。
後日ある方が教えてくださったのだが、雇用問題は文科省の所轄ではないので文化政策部会では話し合えないらしいことが判明。縦割りなんだなあ。