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横浜「黄金町バザール」

9/11(木)、横浜市黄金町(こがねちょう)で開催されている「黄金町バザール」のオープニングに行った。

会場となる横浜・初黄(はつこう)・日ノ出町地区は、ほんの数年前までは違法な特殊飲食店が軒を連ねる売買春エリアだった。しかし、2005年の神奈川県警による一斉摘発と地域住民による浄化活動を機に、地域再生に向けた取り組みが本格化。「文化芸術創造都市」を標榜する横浜市らしい試みで、「地域とアートの共存を通してまち並みを新しく生まれ変わらせる」ことをめざしたのだった。

オープニングで久々に訪れた黄金町は、驚くほど変わっていた。地域住民の方々や初黄・日ノ出町環境浄化推進協議会、バザール実行委員会メンバー、横浜市、アート関係者、県警、京急、助成・協賛元など、関係者すべての並々ならぬ努力を感じずにはいられない。

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黄金町バザール読本。「まちの歴史」「まちの話いろいろ」のページを読んでバザールを巡りたい。

2006年5月。横浜市文化芸術都市創造事業本部(現・開港150周年・創造都市事業本部)が、このエリアの違法風俗営業店舗の転用事業を本格的に始める際、モデル店舗(のちの「BankART桜荘」)と周辺地域の視察に参加させていただいた。県警による「バイバイ作戦」(違法営業一掃のための24時間パトロール)が続いていたのか、エリア入口には警官が常駐する「歓楽街総合対策現地本部」が設けられ、緊張感が漂っていた。所狭しと立ち並ぶ同じ形をした飲食店は、窓が新聞紙で覆われ立ち入り禁止。辺りにはひと気がまったくない。店舗の内部を見せてもらうと、急な階段の上に小部屋が2、3。赤とオレンジ色をした二股電球に衝撃を受けた。線路の高架下には、数か国語で書かれたストップエイズの大きな看板が立っていた。

これが2年前。ここからスタートしたのだ。オープニングで挨拶した中田宏横浜市長はエリア一帯の複雑な権利関係の調整が大変難しいことに触れていたが、そうした表には見えてこない部分での根気ある調整の積み重ねが、この「黄金町バザール」に結実したのだと思う。浄化作戦成功と引き換えにひとけを無くしたあの場所に、たくさんの人人人。かつての違法店舗のいくつかはカフェやショップ、アートスポットに。ストップエイズの看板のあった京急の高架下には明るく大きなスタジオができあがった。そしてたくさんのアーティストがバザールに参加している。

まち並みの再生にアートが発揮する力を確かに感じた。が、それ以上に、自分たちのまちをどうにかしたいんだという"地域の本気"が、黄金町からは伝わってきた。まちづくりは「瞬間的な華やぎ」の創出ではなく、地域にとっては永遠に続くもの。しかも過去の歴史を消すのではなく、その上に作り上げていく。

「オセロのコマを黒から白に裏返していくように、店舗を少しずつ変えて、まち並みを再生したい」----横浜市の担当者が以前おっしゃっていた。黄金町バザールがそんな風に変化し続けて、地域住民が安心して楽しんで暮らせるまちになっていくことを願うばかりだし、目に見えない部分での関係者の地道な取り組みにこそ、今後も注目していきたいと思う。

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