日本人と寄付
「日本には寄付の文化が無い」とはよく言われること。続く言葉は、「だから、なかなか活動資金が集まらない」(by寄付を集める側)、「だから、寄付金優遇税制の整備もさることながら、まずは寄付のマインドを醸成せねば・・・」(by国や行政)。
そうでもないんじゃないだろうか?日本人にも寄付のマインドはしっかりある、と最近思う(お布施や喜捨の伝統は含めずとも、ある)。ポテンシャルも高いと確信している。しばらく前からの実感である。
この数年で、日本にも「寄付のメニュー」が増えてきた。寄付を集める側が、魅力的な寄付のプログラムや受け皿作りに真剣に取り組み始めたのだ。ただ待っている状態からの脱却だ。例えば、寄付による投票条例等によって、地元の身近なテーマで基金を設置する自治体が増加している(現在約60もの事例!「知床・羅臼まちづくり基金」は寄付額も大変多い)。NPOや市民も、さまざまな方法で、「ちょいとひとはだ脱いで協力したくなる」ような寄付のメニューを開発し始めた。アート系もしかり。そういえば、匿名性の高い寄付とは異なるが「ネーミングライツ」なども話題になった。
企業でも、CSR(企業の社会的責任)の動きと歩調を合わせるように、寄付メニューの提示が増えてきた。売り上げの一部を寄付、というのは従来からあったが、マイレージやカードのポイントと交換できるアイテムに社会貢献(寄付)プログラムを入れる企業などが出てきた。あるカード会社のご担当者によると、最も人気のある交換アイテムだという。買った商品の売上金の一部が寄付されるのと、自分でポイント交換時に寄付プログラムを選ぶのとでは、明らかに消費者側のマインドが違う。
方法も多様化し、ネットを介したワンクリック募金などもかなり普及してきた。
心の琴線に触れれば日本人も寄付をする。大事なのは魅力ある、わかりやすい、幅広い寄付の選択肢(メニュー)を提示すること----こんな確信のもと、最近はせっせとユニークな寄付メニューの事例集めにいそしんでいる。「日本には寄付文化がないから××できない」、なんて言い訳のできない時代はそう遠くはないだろう。
【おさえておきたい周辺情報】 「税制」をめぐる最近の動き(財務省WEB)。H20年度の税制改正では、「民間が担う公益活動の推進・寄附税制の拡充」が掲げられている。