社会の変革をめざす民間政策集団
セゾン文化財団の2006年度事業報告書を拝読。
何を隠そう(隠すほどでもないが)、筆者はここの年次報告書が大のお気に入りだ。活動実績がコンパクトにかつ分かりやすく収められているだけでなく、活動の目標や助成のねらい、活動分野における課題が簡潔にまとめられている。他を牽引する芸術助成財団ならではのメッセージがここにぎゅっと詰まっている。しかも全編バイリンガル(英語でどう表現するのか迷った時、よく参考にさせていただいている!)。昨年度少しデザイン等が変わり、今年は財団設立20周年記念の特別版となっている。読み応え十分、年表などは資料価値も高く、永久保存版だ。
堤清二理事長による巻頭言の冒頭の言葉----のっけからハッとさせられる。そして、そうそうたる顔ぶれの関係者45名から寄せられたメッセージ。「もしセゾン文化財団がなかったら・・・」というコメントが多いことからも、成し遂げてきた活動の意義・果たしてきた役割の大きさを実感せずにはいられない。
寄稿者の一人、富山大学芸術文化学部教授の伊藤裕夫さんは、アメリカのフォード財団等の例をあげ、助成財団(特に大手)の役割は単に資金的な助成をするだけでない"社会の変革を目指す民間政策集団"、"社会を変えていくための政策形成者"と書いておられる。
他国に比べ寄付税制は整備されておらず、しかも長引く低金利。日本の助成財団を取り巻く経済的環境は決して恵まれてはいない。助成額だけみれば世界の中では大手ではないかもしれないが、専門家たるプログラム・オフィサーを擁し、限られた資源で常に時代に先駆けた活動を続けるセゾン文化財団は、日本の誇る民間芸術助成政策集団である。
年表の2004年度の欄に「ネットTAM開設」が!ありがとうございます!