みなさん こんにちは。福岡のミュージアム・シティ・プロジェクト(MCP)のミヤモトです。今回は来年(2009年)春に始動をもくろんでいる「西天神芸術センター」(仮称)について、お知らせします。
コンセプトの一部は7年前の2001年夏、福岡市博多区は旧冷泉小学校校舎でTAMチャレンジ編として開催した「冷泉藝館」と繋がっています。「冷泉藝館」では、図書室だったスペースをインフォメーションカフェ+ミーティングルーム+オフィスとして改装し、教室を使ってレクチャー、ワークショップ、展覧会などを行いました。
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冷泉藝館 カフェ風景 |
ミュージアム・シティ・プロジェクトは、1990年から10年にわたって、2年ごとに福岡のまちで現代美術のプロジェクトをおこなってきました。2000年以降は大きなイベントを開催するのではなく、街の機能をいかしたプロジェクトをやっていこうということでアートスクールやアートバス、アートホテルなどの提案と実践をおこなってきました。
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『MCP1990-200X』記録集表紙(品切れ) |
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アートホテル・藤本由紀夫ルーム(ミュージアム・シティ・プロジェクト2002) |
アートセンター構想については90年代半ばから考案しており、ショッピングビルに併設・使われなくなった校舎を使う・既存の複数の拠点を繋ぐ・港湾や劇場などの新規建造物に組み込むなど、さまざまな提案をしてきました。が、残念ながら、公立(または公設民営)としては、実現に至っていません。
2006年には、アートセンターを考える会なるものを、有志で開催しました。
※「福岡のアートセンターを考える会」ホームページ
この会を通して私が考えたのは、アートセンターは誰のためのものか、ということでした。アートやアーティストは限られた業界のなかにいて、市民にはわかりづらい、そこをわかりやすく伝えるための施設としてのアートセンター、という考え方もあります。
しかしながら、私は、アートを生み出す立場の人たちに意義のある場所こそがアートセンターなのではないか、市民に伝えるための場所というのは、既存の美術館博物館の機能を展開することで可能になるのではないか(民間と協働するという手法を交えれば)、と考えています。
アートセンターは、アーティストが新しい表現をつくるための情報や場を提供するものであるべきではないか。アーティストが欲しいと思う場所でなければアートセンターを作る意味はないのではないか。...そう考え始めました。
少し時を戻して2004年春、MCPは(財)福岡市文化芸術振興財団から「ギャラリーアートリエ」の企画運営を委託されました。商業施設(福岡アジア美術館と同じビル)のなかに、文化情報館アートリエなるものができており、この一角に地元の芸術を紹介するギャラリーを作ったというわけです。
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ギャラリーアートリエ 2004年12月 「通りと広場」 |
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ギャラリーアートリエ 2008年8月 牛島智子展「旅する青二才」 |
MCP的にはここで「アートセンター」活動ができるかもしれない、と期待しました。企画展をおこなうかたわら、この場所がアートセンター機能をもつことを意識して会場を整備し、市民向けプログラムを考え、プチアートセンター企画もおこないました。
そして、5年目。リニューアルを経たアートリエがアートセンターになることはないようです。将来的にどうなるのかは市の方針に委ねられており、わかりません。
気がつけば、最初にアートセンター構想を提案してから10年を超えていました。
もう、いいんじゃない。
いいんじゃないかな。
自分でアートセンターって言っても。
公立の施設ができなければ、記録に残らない、そうなると人々の記憶に残らない。公立の施設としてのアートセンターがあったほうがいいと、思っています。でも、それを待つよりも、ほんとうに必要な機能が何であるのか、実際に動きながら試してみたい。
もうひとつ。
アートNPOという視点が始まった90年代後半からずっと抱いていた違和感をどう解決するか。アートと社会を、という掛け声の90年代を経て、はたして、アートは本当にチカラを得たのだろうか。
そういった想いをもったプロジェクトが<西天神芸術センター(仮称)>です。
福岡在住のひとであれば「西天神」と聞いたところで、プッと吹き出すはずです。そういう地名はありません。所在地住所は「大名」で、明らかに天神の西ではありますが、このエリアを「西天神」と呼ぶことはありません。ある種のマンション業者さんでなければ。
活動内容(野望)を書いてみます。
- アート情報の収集、紹介、発信。アートよろず相談。
- アートプロジェクト、レクチャー、トーク、ワークショップ等の実施。
- バザール系のイベント実施(アートフェア的視点)。
- 展覧会やスタジオ的な利用。
- 出版(将来構想として):アーティスト・カタログやアートテキストブック、マガジン。
こういったことは、まあアートセンターとしては当たり前の機能です。キーワードは福岡、九州、アジア。そしてちょっと偏っていること。国内外のアーティスト個人の動きや自主的な活動(NPO含む)を重点的に。
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第1松村ビル外観(2008年3月) |
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「紺屋2023」入り口(2008年8月) |
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アート・ベース88(西天神芸術センター・仮称・準備室)室内 |
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「紺屋2023」1Fのカフェは2008年度週末のみ営業 |
このスペースの重要なポイントは、入っている建物「紺屋2023」(松村第1ビル)は、リノベーションプロジェクトであるということです。
ディレクター系雑居ビルというコンセプトのもと、異業種が入居(アート・写真・建築・グラフィックデザインという視覚芸術系だけでなく、IT・イベントプロモーター・芸術工学系大学のオフィスなど)します。またビル内にギャラリー、カフェ、レジデンスルームが設営されます。立地は福岡の中心地・天神から徒歩数分、周辺はオシャレ系商店街というバツグンの環境。これらの機能と、人のつながりをいかしてゆくことこそがミソになります。
※紺屋2023ブログ http://konya2023.jugem.jp/
それから、運営方法もポイントになります。アートNPOの仕組みが、アートをサポートするのに本当に向いているのか。どういった運営手法が、現在の日本において一番「芸術をおもしろくする」ことに向いているのか。スタート時は、一種のアートプロジェクトという位置づけで始めますが、新しい仕組みを考え、実践しながら運営したいと思っています。
...とまあ、こんな具合の2008年時点での「アートセンター構想」です。
このスペースに関する写真はコチラ(flickr)。写真は徐々に追加されてゆきます。
2008年度中は、月に一度程度、アートレクチャーを実施するほか、随時プチイベントを開催します。情報はコチラのブログからどうぞ。
同じ建物内(紺屋2023)で安く泊まれますから、全国から海外からぜひお越しください。ヨソにはない福岡ならではのレアな体験ができるよう、楽しい企画を考えてゆきます。
(2008年8月24日)