子どもはハタラけ、大人は学べ?!
開催日: | 2002年 11月30日 12月1日 |
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開催地域: | 小出郷 |
会場: | 小出郷文化会館 |
ジャンル: | 音楽 |
参加者数: | 74人 |
コーディネーター: | 小出郷文化会館 榎本広樹 |
子どもたち自身が形作っているコミュニティの姿は、大人にはなかなか見えない。大人は自分の子ども時代を思い返して、「子どものことがわかる」と思いたがるが、「人は記憶を捏造し、粉飾するものだ」という心理学のさまざまな実験結果を知れば、それが虚像に過ぎないことに鳥肌が立つ。子どもが成長して大人になるのではなく、子どもは死んで、大人になるのだ。
「子どもはハタラけ、大人は学べ」と題されたTAM 小出郷セッションで明らかになったのは、子どもと大人の意識のずれだった。アウトリーチで学校訪問があっても、数ヶ月すると「出演した音楽家の名前も演奏された曲名も覚えていない」と言い放つ子どもたち。週1回2時間だけ集まるジュニア吹奏楽団には、音楽が楽しくて来ているのだろうという大人の側の思い込みを打ち砕いて、「話したことがなくても、メンバーは全員友達だから」と主張する子どもたち。大人の幻想に何の頓着もせず、子どもたちは独自の世界を作る。
その差を認めるところからしか、新たな方策は生まれ得ない。群馬県新町で地域総合スポーツクラブを設立・運営する小出利一氏の報告は、スポーツが人と人を結ぶことができるという確信に満ちていた。チェロ奏者堀了介氏の言葉からは、子どもたちがどう受け取ろうと自分は自分の信じた音楽を作り続けるだけだという強固な意志が腹の底にあった。それ以外にも、学校現場で、塾で、あるいはアート系のサークル活動の場で、それぞれ苦悩しつつもその場に生き続けようとしている大人たちの声を今あらためて振り返って思う。もし芸術に、人が生きていく上で欠くべからざる力があると信じるなら、それをできるかぎり多様に展開していくことだけが、私たち大人にできることのほとんど全てなのだ。倦むことなく、飽くことなく。
[小出郷文化会館 榎本広樹/04年8月]