ネットTAM

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大阪セッション

アートマネジメントに必要な発想の転換

開催日: 2001年2月 24・25日
開催地域: 大阪
会場: 大阪府立文化情報センター 大阪府立女性総合センター
ジャンル: 美術
参加者数: 199人
コーディネーター: ハラ・アート・オフィス 原久子

すでに美術の分野の開催も大阪セッションが10回目。神戸に引き続き関西での開催は2年連続ということになった。TAMの受講者にリピーターが非常に多いことには定評がある。神戸での『芸術の基礎体力--アートマネジメントのABC』を基礎編と位置づけ、昨年の講座の次のステップとして今回の講座を考えた。

試行錯誤しながら現場を支えるアートマネジメントの仕事だが、慣れが出てくると経験的に行ってきたことを繰り返してしまうことに陥りがちだ。とはいえ、仕事によって条件は異なるし、社会状況の変化に応じて処理せねばならない問題への対応方法も変わってくる。そこで、トピックとしてあげたのが、美術市場の循環に"地域通貨"をあてられないかといったことや"ボランティア"などの問題だ。

これまでのTAMでもお金の話題は頻繁にあがってきたが、その多くはどうすれば助成金や企業協賛を獲得できるといったことだったと記憶する。しかし、助成金や協賛金の予算が無尽蔵に確保されているわけではない。そこで、"地域通貨"を導入するなど、アートにかかわる人々のコミュニティそのものや意識の変革を行い、美術作品の流通や、さまざまな価値交換による市場の循環を考えようとする美術家・白川昌生氏の実践例を聞いた。

また、人手が必要になる大規模な展覧会等の催しでは、ボランティアの支援なくしては、人件費の問題などから開催さえ難しい。そんなボランティアについて、参加する立場と、ボランティアのサポートを受ける立場から、それぞれ発言してもらった。非営利団体の代表をつとめる鬼塚哲郎氏は、ボランティアのニーズアセスメントを知り、そのニーズに沿ったプログラムを作成・実行し、実践後の評価を行い、次の活動、あるいは他の活動への参考モデルとして記録を残し役立てていく事の重要性を説いてくれた。

つねに動いている現場では、アートマネジメントの知識や経験も重要だが、状況を的確に判断し柔軟な態度で仕事をすることが大切だ。美術界の文脈のなかだけで考えるのではなく、現実と向き合いながら、その場に応じ発想の転換のできる人材が育つことの必要性を改めて強く感じた。

[原 久子/01年7月]

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