魔女の宅急便の自転車
この話は、突然はじまりました。
CycleBoyの工房は茅ヶ崎の里山の牛舎をバイクカスタムの友人、徳田輪業の徳田さんとシェアして3年前より活動しています。以前はもっと海の傍に工房がありました。なんとなく牛舎っていいなあとイメージしていたら、徳田さんが、
「牛舎あったよ。」
「えー?」
「いっしょにやろうか。」
「ん。」
イメージってすげーな...
ここは茅ヶ崎の海の匂いはまったくなく昭和の時間が止まった空間です。地元の人もなかなかたどり着けない秘密基地。ある日、徳田さんが映画会社の人を連れてきて、
「実写版の魔女の宅急便の話があるけど、自転車作る?」
「実写版? なにそれ。わからないけど面白そう。やってみよう。」
軽いノリでした。映画会社の人から話を聞いいてみると自転車のイメージで決まっているのは「パン屋さんの自転車」だけでした。色は赤でちょっとヨーロッパな感じ。籠は大きい籐のバスケット。わかりました。
次に「羽根付き自転車」。羽根は制作会社が制作してくれるとのことでしたが、自転車のイメージはまったくありません。そこで、CycleBoyから提案してみます。時代も国もわからないような、古いのか新しいのか過去なのか未来なのかわからない。そう3,5次元、現実と空想の合間...
「こんな感じでどうでしょう。」
「いいよ。」
「えーいいんだ。」
ここから怒涛の制作が始まりました。まず「羽根付き自転車」。フレームは昭和な感じでいこう。なぜ、昭和かといいますと特に昭和30年代は作り手の情熱が詰まっています。きっとマーケティングなどせず、いいと思うものを作っていたと思います。その思いが時を経て感じ取れるからでしょうか。CycleBoyにはビンテージのストックがあり、なんとなく決定。フロントフォークは機械仕掛けのUSA製がいいか。スケッチを書くように現物合わせで、インスピレーションが強く沸くものだけをたよりに制作していきます。市販のパーツでイメージに合わないと作っていきます。ひたすら組み付けては壊し、眺めます。この眺めることがデザインのひとつの重要な過程です。時間もかかります。
羽根つき自転車のチェーンケース
この制作方法はCycleBoyのオーダー自転車の手法でもあります。お客さんと話をします。その時、自転車のスペックを決めていくのではないのです。お客さんと「同じ景色を見る」あの映画のワンシーン、など共有する景色、これを探していきます。漠然としたオーダーシステム。しかし、確かにふたりでその景色に入っています。うれしそうな自転車とお客さんの景色をキャッチできた時、お客さんとセッションをしてドキドキを共有したとき、オーダーが終了します。このドキドキがなければ制作にはいれないのです。これと同じ手法で魔女の宅急便の自転車は制作を続けました。「羽根付き自転車」が出来、すげーと感動を頂きました。しかし...「トンボの普段乗り自転車」、「クリーニング屋さんの自転車」、と合計4台になり、その度に感動していただいてうれしかったですが、死ぬかと思いました。
映画が始まり見に行きました。ドキドキしました。
自転車がまるで脇役のようにたくさん現れて...。
(2014年6月22日)
今後の予定
CycleBoy
オリジナル自転車がやっと量産になりました。
「trunk」のカスタムバージョン
・木の泥よけの自転車
アパレルメーカー45rpm ノベルティーとして10年作り続けてきました。販売権を頂き販売を開始しています。